麗しきティーペアリング

先日、祇園MAVO(マヴォ)さんでティーペアリングを体験いたしました。

祇園MAVO オーナーシェフ 西村 勉 氏が生み出した 『ティーペアリング 彩』は、 水出しした日本茶をベースにガストロバック (減圧加熱調理器 )でスパイスやドライフルーツなどのフレーバーを抽出した”新しいお茶のかたち”、それを七十二候 と医食同源を取り入れたフランス料理と合わせる、ティーペアリングです。

ワインを専門にすればするほど、ワインペアリングのようなノンアルコールペアリングがなんとかできないものかと、何年も前からずっと頭の片隅にありました。

現在、いろいろなレストランで様々なノンアルコールペアリングが楽しめますが、 ”お茶”をベースにすることが最も体に馴染む気がしました。

イタリア料理なので、紅茶、フレーバーティ、ハーブティーなどバリエーションが豊富だし、中国茶も良いのではないかと安易に考え 思いつけば試してみましたが、料理の余韻をスパッと切ってしまいアッビナメントにならず、マウスウォッシュしてしまうため実現しません。また、お茶としての完成度が高いほど、何かを加えるとバランスを崩して台無しになるし、いろいろなお茶を順番に選んで出すだけでは何かが足りない。

そうです、日本茶なんて思いつきもしませんでした。最初から頭にない。毎日、家では焙じ茶や緑茶をそれなりに選んで楽しんでいるのに、です。あまりに日常で気づきませんでした。イタリア料理と全くリンクしませんでした。

そんな中、お客様から美味しすぎて取り寄せたからと、福岡 八女 星野村の煎茶を頂きました。

そして、本質的な問題に気付きました。

思った以上に日本のお茶のことを知らない!! (ソムリエ・エクセレンス、青ざめる)この煎茶をどうしてもきちんと正しく味わいたいが、どうするの?湯温は?低めってどのくらい?毎日飲んでるお茶、あれでいいの?ほうじ茶と煎茶では違うってネットに書いてある!!もう、生まれたて赤ん坊脳。 コーヒー、紅茶、ハーブティーには細心の注意を払うのに。

ガーンとなっているところにシェフ山嵜が「こういうのどうでしょ」と。Facebookで祇園MAVOさんのティーペアリングを知りました。 日本茶をベースにした『ティーペアリング 彩』は、まるでワインのように美しい!!更に七十二候と医食同源まで取り入れる、そんな夢のようなことが実現可能なのですか!!即電話予約。

そして、理想を遥かに上回るフランス料理のティーペアリングを体験することになるのです。

まず供されたのは、飛鳥の蘇と 内閣総理大臣賞受賞の宇治白川 辻喜代治さんの 抹茶!!抹茶はお猪口に注がれています。ステキ。

蘇の上品ながら複雑な甘みとねっとりした食感は、まるで小さなチーズ菓子。極上抹茶の苦みのない、上質で深い甘みと旨み、クリーミーな舌触りがとても合いました。ほっとする食事の幕開け。飛鳥の蘇に出会えるとは!器まで日本らしさ満点なのに、味わいにはなぜかフランスのエスプリを感じます。

アミューズは、祇園MAVOのシグニチャー ”始まりは卵”

卵黄のコンフィを器の底に忍ばせた小さな前菜には、煎茶をベースにドライアップルなど加えて抽出し炭酸を注入、仕上げに柚子のビネガーで爽やかに仕上げたスパークリングティーを合わせます。

”始まりは卵”は、優しいミルクの泡の下にりんごやくるみ、食べ進めていく内に濃厚なイクラと卵黄のコンフィにたどり着く、一つのコース仕立てになったような驚きのアミューズです。

イクラにお茶の旨みがすっと寄り添い、ビネガーの酸味と炭酸が卵黄をそっとリフレッシュ、最後は柚子の香りが余韻となって残ります。

ゆっくり水出ししてガストロバックで抽出するので、お茶は柔らかく他の素材はしっかりと抽出されるのだそうです。お茶は感じますが他の素材の風味が絶妙に合わさっています。初めて味わうジャパニーズ・フレーバーティーという感じ。シェフがお料理に合わせて考案されるので、お料理との相性はもちろんのことティーとしての完成度が非常に高いです。シェフの頭の中でどんどんできていくのだそうです。

本日のラインナップ『ティーペアリング彩』色とりどりで見目麗しい。うっとりしてしまいます。

それぞれに使われるお茶とブレンドしてある素材のサンプルは、眺めるだけでアロマ効果。まるでワインの香りのパレットのようです。お茶のブレンド内容は、その日のお料理と共にシェフの頭の中で構築されるため日々変化します。マダムをはじめスタッフの皆様は大変!!シェフの頭の中、見てみたい!!

一皿目は、 間人蟹(たいざがに)!!! 立派なカニの甲羅の下に潜む、新鮮な間人蟹とたっぷりキャビアの前菜 ・・・シェフのご厚意に心より感謝していただきます・・・

間人蟹 とキャビアには、 ”鳳凰”。 宇治白川 辻喜代治さんの 抹茶にする前の手もみをしていない緑茶である ”碾茶”(てんちゃ、中国の甜茶とは異なります)がベースです。手もみをしないことでお茶がもつ旨み成分”テアニン”をしっかりと感じることができます。(煎茶は手もみをしたもの)

間人蟹 の自然な深い甘みを、碾茶の上品なテアニンの旨みと甘みが引き立てるティーペアリングです。キャビアは程よい調味料となり蟹の甘みを増長させながら、ぷちぷちした食感がねっとりとした蟹の食感を際立たせます。余韻には間人蟹の甘みと、碾茶とキャビアの香りが一体となり潮風のよう。

料理の余韻を切らない、むしろワインのように寄り添い盛り上げる、マリアージュ効果をもつお茶が存在するのですか!そのことをお伝えすると、紅茶のように発酵したお茶はマウスウォッシュ効果が強いとのことです。そして、もう一つのお茶の大切な成分”カテキン”は、別名”タンニン”でありワインでおなじみの渋み成分ですが、栽培から丁寧に作った碾茶は、カテキンよりもテアニンを感じることができるお茶ですので、なるほど納得!上質で丁寧に構築されたお料理に合います。

季節のお皿が続きます。二皿目は、牡蠣。低温で殻ごとゆっくりしっかり火を通した牡蠣に、 酸味の効いたお野菜のさっぱりしたソースと濃密なベアルネーズソース の2種のソースで味わいます。

牡蠣には、”薔薇”。ほうじ茶をベースに、ビーツの皮、バラの花びら、ドライアプリコット、ハイビスカスなどを抽出したほんのり酸味があるお茶です。

薔薇という名前の通り、ロゼワインをイメージしてブレンドされたそうで、色も素晴らしい。

低温でしっかりと火を通した牡蠣の旨みと焙じたお茶の旨み、ソースの酸味と焙じたお茶のかすかな香ばしさ、ハイビスカスの酸味が合わさって、バラの花の香りが余韻に残り牡蠣の磯の香りをなんともエレガントに締めくくる、ある意味ワインでは体験できないマリアージュ!!幸せの一言に尽きます。

続いて、少ししっかりめの前菜。 フォアグラ 黒トリュフとリンゴのピュレ、リンゴのぬか漬け(!!!)を添えて 。

フォアグラの温かさで黒トリュフの香りがふわぁ~~~と漂って、もうたまらん!この豪華な一皿には、”華”。

”華”は、和紅茶をベースにドライいちぢく、ドライアップル、ドライパイナップルなどを抽出した、本日初の発酵茶ベースです。発酵茶は口中の油脂分をさっぱりとさせるので、フォアグラの動物性油脂分を優しくウォッシュするため、和紅茶を水出しでベースに使用したそうです。

フォアグラのほんのりナッティな香りと黒トリュフの香りのハーモニー(最高!)を残しつつ優しく口中を洗い流す、絶妙な和紅茶のタンニンです。添えたリンゴのピュレと、浅漬けでもなく古漬けでもなくシロップ漬けでもない、リンゴのフルーティさを残したまま心地よい複雑味をまとったリンゴのぬか漬けが、お茶の甘酸っぱさとマッチしフォアグラを盛り上げる、これまた素晴らしいマリアージュでした。

まだまだ続きます。お次は、間人蟹と柚子のジュレの温かい一皿 黒トリュフと自家製カラスミを添えて。またしても、シェフのご厚意に預かり間人蟹の豪華な逸品!

蓋の上の柚子を絞っていただきます。この一皿には、”鶯”。

”鶯”は、玄米茶ベースで、トンカ豆とシナモン、仕上げに抹茶を加えたにごり茶です。トンカ豆やシナモンの風味をまとった玄米茶の軽やかな香ばしさが、黒トリュフと共に蟹の甘さを引き立て、爽やかながらこっくりとした温かい柚子のジュレと抹茶のテアニンが蟹の旨みを引き立てる至福のペアリングです。日本料理のように見えて日本料理ではない、洗練を感じる”仏”料理。

MAVOさんではお品書きの代わりに、その日の二十四節気と七十二候の言葉と共に西村シェフの想いが書かれた和紙が各席に置かれています。その日は、『立春 東風解凍』でした。全ての素材に多くの人々と自然が関わる、その全ての命と自然からの恩恵を預かり、感じ、手がけ、お客様へと繋ぐ大切な料理人としての役割と、今をいただくことへの感謝を喚起するシェフの想いは、「自らの心に仏を宿し 慈悲 尊厳 感謝を以って行う仏料理という新たな代名詞とともに」という言葉で締めくくられていました。単純にフランス料理ではなく、祇園で日本の料理人が全身全霊を注ぐ”仏料理”なのだと感じました。

お魚料理は、間人蟹と 甘鯛の松笠焼きです。大切にいただきます。

こちらの一皿には、”禅”。

”禅”は、煎茶をベースにほんの少しバニラビーンズを加えた、ピュリニー・モンラッシェをイメージしたお茶です。上質な煎茶を丁寧に抽出することで、ごく少量のバニラビーンズでフランス料理の魚料理に寄り添うグローバルな味わいになるマジック!!上質で深い味わいのお料理に添えられたソースのバターの風味と、ワンランク上の芳醇なテアニンがバニラビーンズのほのかな香りで増幅する、”口福”なマリアージュでした。

お口直しは、柚子のアイスクリームにショウガとウコンのソルベ。

柚子の酸味に甘めのショウガがスパイシーに絡まり、ウコンの香りがエキゾチック。隅々までシェフのセンスが光ります。

メインのお肉料理は、網採り鴨 ストウブで調理した松ぼっくりの燻製です。

メインの鴨には、”彩”。もう、見た目も味わいも完全にブルゴーニュ ピノ・ノワールの古酒です。ブルゴーニュの中でどこかと例えると、シャンボール・ミュジニー。柔らかく優しい中に、芯の通った包容力を感じました。

”彩”は和紅茶ベースで、ハイビスカス、ドライいちぢく、ドライアプリコット、シナモン、スターアニスなどを抽出しています。ここまで複雑で完全なブレンド、その上この素晴らしい色!感嘆のため息。「ブルゴーニュのピノ・ノワールがここまで滑らかに熟成するのに何年待たねばならないのでしょう!!」と申し上げたら、「1995年頃のブルゴーニュをイメージしてブレンドしました。」と西村シェフ。脱帽。

口中を優しくリフレッシュする和紅茶が心地よく、柔らかくも複雑な酸味がお肉の鉄分と相乗、アフターはフルーツのフレーバーが心地よく続きます。余韻が長い!!添えられた里芋との相性も抜群でした。感動の嵐。

アヴァンデセールは、5種の柑橘とヨーグルトのムース、ウコンのピュレと飴を添えて。

ここでもウコンが異国情緒を演出、大人のリゾートを感じる味わいでした。他のテーブルの常連のお客様は、ワインペアリングだったので西村シェフのさり気ないウコン使いに感激しておられました。ワインペアリングも素晴らしかったことでしょう!!

本日は、ティーペアリングのみでの満足感があるかどうかも検証したかった(そして、満足を遥かに超えました!!)ので、残念ながらワインはいただきませんでしたが、ワインとティーが代わる代わる出てくるハイブリッド・ペアリングや、ティーペアリングとグラスワインなど、マダムに自由にご相談可能です。飲める方も飲めない方も、同じように楽しめるようにという、ティーペアリングのコンセプトが完全に実現しています。

デセールは、フォンダンショコラ ほうじ茶のアイスクリームに七味唐辛子をアクセントにベリーのソースを添えて。

フォンダンショコラには、淹れたての煎茶が出てきます。一煎目の柔らかくも深いテアニンの味わいは、フォンダンショコラに勝るとも劣らない想像以上のマリアージュ!!味わいとしての渋みは感じませんが、成分として含まれているカテキンからディジェフティフ(食後の満腹感を緩和し消化を促す食後酒)のような作用を感じてほっとします。

そして、こんなこともあろうかと、ほんの少し残しておきました”彩”!! 先ほどは土台を支えていた和紅茶が、表舞台に映えるフレーバーティとして様変わり。お料理の時と一味違う味わいを楽しめました。混醸のワインが合わせる料理でいろいろな表情を見せるのと同じように、ベリーのソースに少し違うトーンのソースが加わったようなマリアージュ。ティーサロンなどカフェでのオリジナルティーとしても素敵です。

プチフールは、特別なお米で作った最中。白あんに抹茶を練り込んで絞った深緑のあんと酸味の効いたあんを挟んだ、一口サイズの最中です。”仏”料理の解釈から見ると、雪が解けて山肌が見え芽吹きを待つような小さなモンブラン、と言えるかもしれません。梅の花芯には、ウコンのクリームを。

プチフールには、二煎目の煎茶を合わせます。

ウコンとナッツが急須のデザインと似ていて可愛い。二煎目 のテアニンと共にはっきりとカテキンを抽出した煎茶は、まさにディジェフティフ効果抜群!テアニンとカテキンのバランスが素晴らしいです。 たっぷり満たされたお腹はみるみる落ち着き、駅に着くころにはすっかり収まり、軽やかに帰路につきました。お見事でした。

食後にいろいろお話を伺うことができました。

西村シェフは、ペットボトルの普及や日本人の洋食化による、日本のお茶の生産量、摂取量の減少を何とか食い止めたい、 宇治白川 辻喜代治さんのお茶を飲んだ時、強く思われたそうです。そこから悪戦苦闘が始まり、何年もの月日を経て今、『ティーペアリング彩』としてお料理と共にその想いは私たちに伝えられています。

ティーペアリング彩の概念は、さまざまな応用が可能で、もっと簡単に気軽に淹れることもできるそうです。レストランでもカフェでも、なんとご自宅でも!!どこでも誰でも自分のオリジナルティーを作れるように、そしてもう一度、日本茶が日本人にとって最も身近な存在となって、摂取量および生産量の増加につながることが目標だそうです。

そのために、日本ティーペアリング協会を立ち上げ、現在、テキスト作りと講座開講の準備に取り掛かっていらっしゃいます!まずは、飲食店からどんどん発信できたらいいですね!ご興味のある方は、是非『ティーペアリング協会 https://teapairing.jp/  』にアクセスしてください。

また祇園MAVOさんは、 現在のお店から5分ほどの場所に移転される準備のため、 2月いっぱいで一旦お休みに入られます。私のレポートをここまで読んでくださり、居ても立っても居られなくなってしまった方は、ご予約ご来店をお急ぎください!

西村シェフとマダム、そして、スタッフの皆様、心尽くしのおもてなしを、本当にありがとうございました。

シニアソムリエ 改め ソムリエ・エクセレンス 山嵜愛子です

ソムリエ・エクセレンス 山嵜愛子です。・・・って、びっくりした!
認定証と新たなバッジが突然送られてきて、急いでググりました。

なんだか、2015年取得のシニアソムリエの私は、今後”ソムリエ・エクセレンス”だそうです。

日本ソムリエ協会では、2013年シニアソムリエの試験が刷新され、それ以降、皆様ご存知の通り年々難しさを極めておりますが、2012年までの資格取得者は ”シニアソムリエ” 2013年以降の資格取得者は ”ソムリエ・エクセレンス” とすることにしたようです。

さっきから、エクセレンス・シニアとか、シニア・エクセレンスとか、エクセレンス・ソムリエとか、言い間違うんですが、とにかく、そういうことらしいです。

バッジは、帯のデザインが黒色になり以前よりエレガントなサイズでステキになりました。

改めまして、どうぞよろしくお願いいたします。