第1回 奈良のいちご料理orデザート コンクール ~ふじい農園見学編~

いつからイチゴの旬は真冬になったのだろう?
幼少の頃、露地栽培のイチゴを収穫した時、寒くもなく暑くもなくとても心地よい季節だったような気がしますが、生産者が口を揃えておっしゃっていた「3月末??無いよ、無い!!」って、なんでかしら?

調べてみると、もともと露地栽培では4月に花が咲き5,6月に旬を迎えますが、現在は昭和30年代に確立したビニールハウスで温度管理されたハウス栽培がほとんどを占め、12月から3月が旬だそうです。その後飛躍的に生産量が伸びました。確かにクリスマス商戦からおひな祭りには欠かせない雰囲気です。イチゴの調達大変だろうな~と昨年まで他人事でしたが、今年末からがっつりイチゴテイスティングしようと思っています♪

さて、奈良市内からふじい農園まで車で1時間弱。
あすかルビーと古都華専門で、各1棟計2棟のビニールハウスをご主人お一人でこなします。その他販売や出荷、広報などは奥様担当。
販売は、畑での直売と3月上旬までは宅配にて全国に直接配送されています。その理由は枝で完熟させ朝収穫したものをその日に販売、発送するからです。
枝で完熟・・・・・それがあの緻密な味わいと香りのひみつだったのです!

訪問日の3月22日は配送時期は終了していましたが、畑での直売用の朝摘みイチゴの選果とパック詰めをされていて、お話を伺っている間もご近所の方が購入にご来店されていました。
う、うらやましい、ご近所ではこのイチゴがスタンダードなご様子。

「主人が脱サラで素人から始めたんですよ~。もぅ、それは大変でした。」と笑顔で奥様。ということは、お若い時に脱サラされたのかと思いきや、「始めて15、6年になります。」えええええΣ(゚Д゚)まさか、そんな短期間でこんなイチゴ作れるようになるんですか!!

農作物を作る仕事は年1回のチャンスしかないのです。あれ失敗した、ま、明日があるさ、と簡単にリトライできないのです。例えば30年農業に携わった、ということはその農作物を30回作ったことがあります、ということです。1年が、1回が、どれほど重く大切か。
それをたった15年ほどで、後継者というわけでもなく思考錯誤を繰り返してここまで辿り着いた・・・感嘆・・・

目の前に積まれたその日の朝摘みイチゴは艶々で、まさにルビーの如ききらめきと芳香を放っており、「こんな時期で甘さ控え目だけど食べてみて。」とかじれば口福幸福♪ 年末年始はもっと甘いそうです。

あすかルビーと古都華を食べ比べてみました。
あすかルビーは酸味と甘みのバランスが良く、果汁が溢れんばかりでイチゴらしいイチゴ。そのままも美味しいですが、イチゴのショートケーキやロールケーキになったら更に本領を発揮しそうです。
古都華は酸味がほとんど感じられず、イチゴから酸味を抜き甘みだけを抽出したような昭和女子の私にとっては新たな味わいの ”ネオイチゴ” です。酸味が苦手な方やご贈答に良いかもしれません。大粒なので食べごたえもありそのまま頬張るのが楽しい品種でしょう。

ケーキには断然あすかルビーと思うのですが、奈良県のケーキ屋さんがこぞって採用するのは『古都華 ことか』(2011年品種登録)。そして卵サイズの存在感絶大な『珠姫 たまひめ』(2019年品種登録)が登場。この2品種に比べると清楚な『あすかルビー』(2000年品種登録)。
・・・もっと甘く!もっと大きく!!もいいのですが、イチゴの甘みや香りは爽やかな下支えする酸味があってこそではないでしょうか!!と街頭演説口調になったとき寡黙なご主人が優しく静かな笑顔で一言、「昔は酸っぱすぎてそのままではとても食べられなかった。」

ハッと我に返る。
私の母は果物が好きでよく買ってきていましたが、子供の私には酸っぱすぎるイチゴに涙がにじみ、しまいに耐え切れず砂糖をかけたり、初めて練乳をかけたときは感動しましたが結局飽きてしまって食べなくなったことを思い出しました。
そんな酸っぱいイチゴから、華やかな香りと甘みにエレガントに生まれ変わった美酸をまとったあすかルビーを経て、イチゴの甘みへの探究が地道な品種選別、栽培技術の開発と改善を繰り返し、古都華、珠姫へとつながってきたのかもしれません。

「ちょっと、畑見に来たんでしょ?そろそろこちらへどうぞ。」と現れたのは美しい毛並みの福さん。畑の案内猫です。
福さんのプロフィールはこちら

まずはあすかルビーのハウスへ。
ハウスに入るととても穏やかで心地よい空気が広がります。

あすかルビーの花

美しい葉が青々と茂り、イチゴが心地よく過ごしていることが感じられます。ハウス内に流れるクラシック音楽は音響もよく、受粉係の日本ミツバチも元気に飛んでいます。

働きミツバチは栽培の期間中専門の業者さんから借りるのだそうですが、ふじい農園ではミツバチの勤務が終わったら巣箱に戻し休ませ、また翌日ハウスに放って働いてもらう、というハウス内に放ちっぱなしではないので、ミツバチの生存率がとても高いそうです。
そしてイチゴにとっても受粉の重複による変形を防げるので大切なひと手間なのです。ただ、まさに手間なのであまり実行する人はいないようです。

マルチ内の土もふかふか。

ハウス内を見渡すと十分熟したようなイチゴが沢山枝についています。本日収穫しきれなかった、というわけではありません。「そのイチゴ、裏を見てみて。」と藤井さん。言われるままに見てみると、あっ、表側より少し色が淡い。「それは、明日くらいには完熟するかな?」

ご主人が必ず太陽が昇ってからお一人で収穫する理由、それは目視で完熟の色を見極めて一粒一粒収穫するためなのです。
「日の出前にライトを頼りに収穫するとこの微妙な裏側の色がわかり辛い。色が淡く均一でないヘタ部分がまだ白い内に収穫すると、実は持ちがいいし色は確かに追熟したかに見えるけど、甘みが増すとか味が熟すことはありません。収穫したその時の味がそのイチゴの味わいとなるのです。」
イチゴの味わいを最大限に引き出した状態で収穫するために各工程を逆算していくと、少しでも形などに違和感を感じたら思い切って早めに刈り取る、収穫は日の出後品質にブレが生じないよう一人で見極める、完熟しているため実を傷つけないようパック詰めに時間を要する、温かくなると配送も難しいので3月以降は畑で直売のみ、といろいろ積み重ねてやっと藤井さんが作りたいイチゴが作れる環境が整ってきたそうです。
もちろん、これ以上にハウス内の作業がぎっしり詰まっています。日光の向きに対する植え込み方とか棚の間隔、温度と二酸化炭素のバランスなどなど、少し失敗してはまた来年改善するを繰り返し、積み重ねていきます。

ハウス内で藤井さんにお話を伺う

お気付きでしょう!さらっと「お一人で作業を・・・」などと書いておりますが、1棟がこの広さ、この量です!!そして隅々まで手入れが行き届いている・・・・・敬服いたします。

では、古都華のハウスへ参りましょう。

画像ではわかり辛いですが、木の背丈があすかルビーより高いのでロープで支えます。実も大きく迫力があります。

おっきい!古都華

大きさが全然違います!

大きなイチゴを丸かじりするシェフの左手は思わず、ルンっ♪

ふじい農園は、愛溢れる生命体の宝庫でした。
空気も土も水も、流れる音楽、虫も植物も、生きとし生けるものすべての存在が感じられる、そしてそれは藤井夫妻がまっすぐ自然と向き合い、既にある技術や知識を鵜呑みにすることなく目の前のその時のイチゴやミツバチや福さんの声に耳を傾け幸せを導くが故に成り立っている空間でした。
福さんの素晴らしい毛並みとゆったりとした佇まいが、ふじい農園の全てを物語っているようでした。「ふじい農園のホームページはこちらにゃり。」

農園に伺って「おいしい」だけでは全く言い表せていないと感じた、緻密に詰まった味わいの深みのひみつがわかりました。
藤井夫妻、福さん、本当にありがとうございました。

いよいよ最終回へ、つづく・・・