淡い水色の「あかのみず」

先日、和菓子屋の鶴屋徳満さんで、季節の生菓子に釘付けになった。奈良では二月になると、東大寺修二会(しゅにえ)の良弁椿(のりこぼし)に因んだ菓子が、各和菓子屋さんの店頭に並ぶのであるが、鶴屋徳満さんにもいつものように今年の良弁椿が売り出されていた。その隣に、修二会に因んだもう一つの生菓子として置かれていたのが、「あかのみず」

その生菓子は、どこからどう見ても、赤くない。淡い水色が、真っ白な求肥にうっすらと透けた、なんとも清らかな菓子。求肥にほんのりつけられた波紋の焼印から、お水取りのお香水であろうと思われるが、なぜ「あか」なのか。淡い水色の「あかのみず」そして、更に混乱したのは、その漢字「閼伽水」・・・お忙しそうだったので、お話しを伺うのは遠慮して、とにかく何もかも美しいので購入した。

楊枝で切ったら「あか」なのか。まさか。やはり清らかな水色である。やわらかく優しい味わいに、心が洗われるようなお菓子で、今しがたの店頭での「あか?!」なんてことも洗い流されてしまったのである。ましてや漢字の「閼伽(あか)」など、水の如く、私の脳から跡形もなく消えた。

最近、奈良まほろばソムリエに近付きつつある方に出会った。そのレベルともなると、奈良のことが、私にはまるで外国語にしか聞こえない。よりによって、歴史が大の苦手だった私の歴史レベルは、生まれたての人間。全く白紙である。ミーハーに、信長から幕末、明治くらいまでは、興味が出てきて多少本など読んだが、奈良時代、飛鳥時代になると、古事記や日本書紀など折に触れて覘いてみるものの、どうもわかり辛いのである。しかし、奈良のお寺や史跡は、その時代に由来するものも多く、避けて通れない感じがするのである。

その方を見ていると、本当に楽しそうである。きっとどのお寺、史跡に行っても、ぱーっといろいろなことが頭の中でつながって、それはそれは面白いのだろう。何より、拝観料と引き換えに、あの漢字だらけの説明書を入り口で渡され、仏像を前に、漢字が読めなさすぎて、へこんでしまうことがないであろうと思うと、便利に違いなく、大変羨ましいのである。

これを機会に、随分以前に購入しすぐに閉じてそれっきりの、奈良まほろばソムリエ検定のテキストブックをひっぱり出して、読んでみることにした。

そして、見つけた!!文殊院東古墳の別名、閼伽井古墳!!謎の水色の「あかのみず」を思い出し、修二会のページへ。あった、あった!閼伽井屋!!修二会では、「閼伽井屋の中の若狭井から水を汲みあげて、本尊に供えられる」とある。

閼伽は仏教において、仏前に捧げられる水のこと。古来インドでは、来客に対し足をそそぐための水と、食事後の口をすすぐための水が用意されたが、それが仏教に取り入れられ、仏前や僧侶に供養されるようになったもの。閼伽を汲むための井戸を閼伽井という。

美しい。

月曜日の特別開館を利用して、現在開催されている、奈良国立博物館『お水取り』にも行ってみた。実際、装束や映像を見ると、大変わかり易い。以前、真夜中の格子越しに拝見した、幻想的な韃靼の記憶が蘇った。

美しく美味しそうな生菓子「あかのみず」に誘われて、奈良をもっと知りたくなった。このさざ波に乗ってさらさらと、奈良の歴史と文化が頭に入りますように。