興福寺中金堂落慶&みうらじゅん、いとうせいこう言祝ぎ見仏トーク

今年の奈良を代表する一大イベント、と言っても過言ではない、興福寺中金堂落慶!!一般公開は10月20日、いよいよ今週土曜日に迫ってまいりました。

約300年ぶりに、2010年から8年かけて再建された興福寺中金堂。10月7日から11日まで法要が執り行われ、沢山の関係者や招待客が連日参列された模様です。気が向いたときお賽銭、休日にぶらっと国宝館、たまには寄るか東金堂、あら特別開扉?と気ままに北円堂へ、などという一般参拝者である私はもちろん招待されません。

しかし、興福寺からすぐの場所で奇跡的に10年以上お店をさせていただいているご縁で、法要の帰りにお食事にいらっしゃったお客様に「どうでした?今日は、どのような趣向で??」と連日伺えたのは光栄でした。毎日少しずつ異なる内容のようで、それは豪華な法要だったようです。

そんな法要の真っ只中、三連休後の火曜日に、シェフェスタで出会った忘れられないピザの味『マガジーノ』へ朝からGO!

人気店ゆえ、事前予約しておいたのでひっきりなしの満席ながら入店できました。お目当てのマルゲリータDOCを満喫。そして、カルツォーネをいただいて、新たに水牛リコッタの美味しさを知ってしまいました。なんと、ピッツァヨーロである野田シェフの手元がしっかり見えるお席に通していただき、お忙しい中いろんなお話も伺えて、シェフ山嵜大感激!!心も体もすっかり癒されたのでした。

次回は当麻寺とセットだな、なんて話しながら夕方の帰り道、せめて外からだけでも中金堂を見ようと通ってみたら、なにやら「今ならお席がご用意できますー!!」というスタッフの方たちの叫び・・・お席?何の?まさか法要??夜もやる?しかもそんな気安く・・・声の聞こえるほうへ近寄ってみると「是非!是非!!」と熱烈なお誘い。いえいえ、ぷらっと参拝者の私など滅相もございません、ともじもじしながら、なんの席じゃ!!!と目だけは見開いていると「みうらじゅん、いとうせいこう言祝ぎ見仏トークin興福寺」・・・・・えぇぇぇ、まさかそんなおふざけを。一生に一回あるかないかの荘厳なできごとですぞ、そんなのどこで?え?法要期間中の中金堂で?失礼ながら、怒られますよ。

お客様から伺う連日の法要とのギャップが埋められずにいる私をよそに、シェフ山嵜が嬉々として一言「おぉ、最近最も会いたかった人です!!みうらじゅんさんに会えるんですか?」「えぇ、えぇ、是非、是非!!」とスタッフの方とはやばや意気投合。私もみうらじゅんさんは好きですが、シェフはそんな会いたかったの。「ではお願いします。」とお財布を用意したら「無料でございます!!」と、これまたびっくり!!

なんと、中金堂に入れたのです。トークが始まるまでは自由に参拝できました。ありがたや、ありがたや。

早速中金堂内部へ。

ひときわ目を引くご本尊 木造釈迦如来坐像。真新しい金箔で覆われた、元の状態に戻した修復でした。奈良では、現状維持の修復が多いので意外でしたが、しっとりと深みのある金箔の色と新しい建物、鮮やかな群青色の法相柱が、平成の終わりから新しい年号を迎え新たな時を刻むのにふさわしいような気がしました。後のみうらじゅんさんのトークでも話題になりましたが、どの段階まで文化財を修復するのかこの難しい課題をどうやって決めているのでしょう。詳しい方に伺ったら、お寺の意向と文化庁との話し合いですり合わせていくのだそうです。

ちなみに、法相柱は興福寺の教義である法相宗ゆかりのインド、中国、日本の高僧14名の人物画を貼り付けた柱で、ご本尊に向かって左脇に立っています。背景色の鮮やかな群青色が、中金堂を華やかに彩ります。奈良県出身の日本画家 畠中光享さんが手掛けられました。

もうひとつの見どころは、須弥壇(しゅみだん)の四方を固める木造四天王立像です。その昔中金堂にあった四天王像は、もともと南円堂にあったことがわかり戻され、重文から国宝に格上げされました。そして、南円堂にあった四天王像が新たに中金堂に配置されました。

さて、いよいよ『言祝ぎ見仏トーク』はじまり、はじまり。

ごあいさつは、みうらんじゅん氏の「おばさんになってしまおうと思います。」宣言から。・・・ほら、だから、怒られますよ。温泉がお好きだそうで、湯船につかっていると後から入ってきたおじさんたちに「ちっ、混浴かよ。」と言われることが増えたからだそうです。そんなみうらさんの印象は、物腰柔らかい優しそうな紳士でした。

1時間半のトークの間、みうらさんの用意したスライド画像に沿ってトークは進んでいきます。始終、造語が飛び出してくるので、思わず吹き出して笑うことしばしば。少し高度だったりわかりにくいと思うとすかさず、いとうせいこうさんの通訳がさり気なく入ります。”マイブーム” ”ゆるキャラ” なる造語を生み出しただけあっておじさんのダジャレの如く、片っ端から造語にするのが日常なのでしょう。

10才のとき作った、興福寺に関する自作の資料は”小人”と書かれたチケットがずらりと並びます。国宝館内部の仏像配置図まで丁寧にノートに貼られてそれぞれに感想や思ったことが書き込まれています。いとうせいこうさん「これは、詩だ!!」その後中学生で礎石にはまり、ノートに貼られた礎石の真ん中に自分の顔写真を貼っていました。なかなかの美形なので、余計に面白い。

途中、中継のカメラが中金堂内部へ入り、みうらさんといとうさんの見仏ライブです。やはり、ご本尊から「修復は一体どこまでやるのだ」から始まり、なにより木造四天王立像のかっこよさが魅力だそうです。そして、法相柱の一番下に描かれているのが、若かりし頃の無著と世親だそうです。木造無著・世親立像は運慶工房作で、北円堂に安置されています。以前、特別公開のとき薄暗くなってから行くと、ろうそくで目が光ってまるで生きているようで感動しました。そのお二人の若々しい姿が法相柱に表されているとは、感慨深いです。

今年の元日に耐震補強を終えリニューアルされた国宝館の動線が、子供のときのスクラップの場所に戻っていることをはじめ、子供のときから見てきた興福寺の仏像たちは、他のお寺と比べてとにかく移動が多いのだそうで、日々の研究から発見される新しい説を取り入れ実行する、歴史が古いにも関わらず柔軟なお寺であるといえるでしょう。

そして、みうらさんが数年前からマイブームにしている”テープカッター”のスライドが次々と映し出されました。展覧会などの開催前に、関係者のみ集めた内覧会のセレモニーとして行われる、あの紅白の牡丹のような花飾りのついたテープを切るテープカットです。

2009年東京上野の東京国立博物館で開催された『国宝 阿修羅展』で阿修羅ファンクラブ会長に任命され、テープカットに参加したことが始まりだそうです。2013年には、『国宝 興福寺仏頭展』を機に”仏友 ぶつゆう” いとうせいこうさんと ”ザ・テープカッターズ” を結成。テープカットという催し自体絶滅の危機に瀕している中、マイテープ、マイ手袋、マイカッターを用意し、頼まれてもいないのにイベントに現れテープカットを行うという活動をされています。よって、隅っこでテープカットしたり、非常に短いテープだったり、同席者が目を合わせてくれないこともしばしばだそうですが、興福寺の別当はいつでも大変温かく微笑みかけてくださるそうです。

興福寺ましてや奈良とも関係ないテープカットの数々、その画像は海外にまで及び、遂には一人で無理やりテープカットした画像や、「カットしたテープについた牡丹の飾りは、落とすと縁起が悪いのではないか。」という持論があるにも関わらず、ご自分の展覧会でテープカットした画像では、完全に花を落としていたりと突っ込みどころ満載の画像が続き、お~い帰ってこ~い、と思ったら舞台上にテープカット用テープが用意されました。若い僧侶をはさんで、テープカットです!みうらさんの「どうぞ撮影してください!」の言葉に、舞台は遠くて無理なのでモニターをパシャリ。

暗さで手振れしましたが、ロックなライブ感が出ています。スリーショットでない瞬間で残念!!いとうせいこうさんは、僧侶の左でテープカットされています。ちなみに、このお若い僧侶は連日の法要で忙しく袈裟が乾く間もなく着用しての参加でした。

今、思い出してもほっこりとする、お寺本来の懐の大きさを体感できた夜でした。すばらしい夜をありがとうございました。