大和イタリアン「干しカマスと板ワカメのインサラータ・ディ・リーゾ」

奈良からイタリア料理で発信する日本の食材魅力発見!

今回注目した伝統食材の産地は「出雲」です。後醍醐天皇が隠岐島で漁師から献上された「つまみ御料」を、イタリアの夏の定番「インサラータ・ディ・リーゾ」(ライスサラダ)に仕立てました。

前菜「干しカマスと板ワカメのインサラータ・ディ・リーゾ」

干しカマスと板ワカメのインサラータ・ディ・リーゾ

 

「つまみ御料」は鎌倉時代末期後醍醐天皇が、流された隠岐島から脱出し出雲に移動中、漁師に差し出された干しカマスと板ワカメを混ぜたおむすびを、手づかみで召し上がったことにちなんで名づけられたと言われています。その後、奈良吉野で南朝を開き生涯を終えた後醍醐天皇の愛した「つまみ御料」その物語はずっと頭の片隅にありました。

板ワカメは新鮮な生ワカメを水洗いして板状に乾燥させた島根、鳥取、京丹後地域の郷土料理で、味付けしていないワカメ本来の塩分、旨み、磯の香りが特徴です。
そして先日立ち寄った「KITTE大阪」
日本各地の”UNKNOWNアンノウン”な特産品がずらり並ぶ、JR大阪駅直結のショッピングセンターにありました、島根県産板ワカメ!!

島根県産板ワカメ

島根県産板ワカメ

美しい。丁寧に収穫し干されたことがわかる、日本海をそのまま届けてもらったような味わいと豊かな香りの板ワカメです。撮影中も磯の香りが漂い波の音が聞こえてくるようです。

 

ちなみにこちらは、平城宮跡出土木簡「出雲國若海藻」

ワカメ木簡(出雲/島根186 平城宮1-407 表 カラー 6AABUS480010781-C1)

ワカメ木簡(出雲/島根186 平城宮1-407 表 カラー 6AABUS480010781-C1)

 

残念ながらKITTE大阪に干しカマスはありませんでした。

 

が、見つけました!出雲 渡邊水産の”美人干物”です!
早速取り寄せてみて思った通り、いや、想像をはるかに超える”美人”ぶりに驚きました。冒頭の画像をご覧いただくと明らかですが干物とは思えない鮮度で、むしろ生魚から程よく余分な水分が抜けベストな状態が保たれています。

 

出雲 渡邊水産は創業60余年、初代は愛媛の元船長さん。山陰の魚に魅了され出雲へ移住し作った干物は常にセリで最高値をたたき出します。2代目は販路開拓と「掃除を己の鍛錬の場とする」として更に推し進め、3代目へと受け継がれました。
創業者がみんなに伝えたかった「美味しい感動」はご家族に受け継がれ日本中に伝わり、そして遅ればせながら奈良でしっかりと受け取りました。

 

リゾットの他におすすめしたいイタリアのお米料理といえば「インサラータ・ディ・リーゾ」
お米にワインビネガー、季節の生野菜とピクルスやオイル漬けの野菜、プロシュート、ツナ、チーズなど保存食を混ぜた、食材の組合せによって食べるごとに味わいの発見が楽しみなお料理です。

 

アンチョビ、ケッパー、オリーブを入れるレシピを基に干しカマスと板ワカメとの相性を考慮して、アンチョビとプロシュートやツナの代わりに潮かつお、自家製の奈良県産野菜のピクルスや前田農園のトマトで作ったドライトマトを合わせ、大和橘の高貴な香りで華やかに仕上げた奈良の「インサラータ・ディ・リーゾ」に、海のめぐみと伝統を継承する人々への感謝と感動を込めました。

 

干しカマスの繊細で上品な旨みと板ワカメの香りが時を経て、インサラータ・ディ・リーゾとして蘇った「つまみ御料」のどこか懐かしくてほっとする味わいは、波乱の人生を送った後醍醐天皇が漁師のあたたかな心づかいにふと安らぎを感じたであろうひとときを思わせます。

 

今も出雲に息づいている温かなやさしさが「大和イタリアン」として皆さまに伝わりますと幸いです。