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烏梅、最後の生産者 月ヶ瀬梅古庵さんを訪ねました

紅工房前にて中西さんとシェフ山嵜

前回ご紹介した「奈良の香りと共に味わうタリアータ」に添える奈良のフレーバーの一つとして、当店では欠かせない存在となった「烏梅(うばい)」
烏梅は煤をまぶし燻製にした干し梅です。漢方として煎じて飲む他、紅染めの色素定着剤として使われています。
この素晴らしい伝統食を最後の1軒になっても作り続けている方が、奈良市月ヶ瀬にいます。
伝統製法を守り続ける月ヶ瀬梅古庵10代目中西謙介さんを訪ねました。

~(中略)~

訪問し烏梅から多くを学びました。

烏梅がなくなれば紅餅は不要となり、紅染めの技術を継承する染色家が途絶える、ウメスダレもクヌギも、消滅の連鎖が起こります。
一つの伝統が欠けると思ってもみない多くの技がこの世から消滅することを、昨今特に、奈良の歴史や文化、食文化を通してつくづく気付かされます。

職人さんたちの思いの連鎖でなんとか繋いでいる日本の伝統を、イタリア料理店として、日本人である私たちにできることは何か。

シェフ山嵜は、こう言います。

「料理人の私にできることは、素材の新たな一面をイタリア料理に融合させることで、その魅力を掘り起こし多くの皆さまに知り体験していただくことだと思います。

これまでの料理人生の中で、奈良に身を置き、奈良の土地の恵みを受け、イタリア料理の本質を模索してきました。

季節を大切にし日々様子が変わる食材に深く向き合う、自然と健康がつながっているマンマから生まれたイタリア料理は、日本の食文化に通ずるものがあると感じます。

しかし、恥ずかしながら私を含め、現代日本人は日本の郷土食を忘れ、気付かない内に失いつつあります。

日本はじまりの地、奈良。
国風文化が花開く以前、他国と交易のあった奈良時代の食文化は、特にイタリア料理との親和性が高いことに気づきました。

実際、様々なお料理として食べていただくと予想以上に、奈良や日本の方のほうが海外からのお客様以上に喜んでくださいます。
大変嬉しい瞬間です。

あたりまえだと思っていた日本の食材の新たな一面を見て味わい、見直すきっかけになったり、消えつつあって知らなかった伝統食を新しい、美味しいと感じていただけることを、自分の料理を通して目の当たりにすると、まだ間に合うと希望がもてます。

奈良各地の伝統食が辿ってきた歴史背景や、日本の固有財産としての魅力を、日本人である私が噛み砕き、伝統的なイタリア料理を基に新たな視点から表現することで、元来の日本らしい豊かな暮らしを提案できるのでは、と思っています。」

伝統食は、日本全国津々浦々にある日本固有の宝だと思います。
見直してみる時が来ているのだと感じます。

~note本文より~

烏梅と紅染

烏梅にご興味のある方は、
note「烏梅、最後の生産者 月ヶ瀬梅古庵さんを訪ねました」全文をご覧ください。
https://note.com/borgokonishi/n/n18eda70c4609

烏梅が月ヶ瀬に広まった歴史や、中西さんが最後の一軒になっても烏梅を作り続ける理由、そして烏梅の作り方やお買い物情報まで盛りだくさんの内容です。

烏梅を知り、購入したり体験したり、月ヶ瀬に行ってみたり、みなさまの楽しいくらしのひとつに加われば幸いです。

続編「月ヶ瀬梅林と梅畑と梅食品」もよろしければご覧ください。
https://note.com/borgokonishi/n/n9f423c0323a5

梅古庵から見下ろす名張川

梅古庵から見下ろす名張川

◆宇陀牧場井上牛のタリアータ 奈良のフレーバーを添えて◆

タリアータは日本のみならず世界で最も有名なトスカーナ料理の一つです。
ミラノで料理修行をしたトスカーナ州ピサ出身のシェフ セルジオ・ロレンツィ (Sergio Lorenzi) 氏が、1973年に古くから存在する牛肉料理ビステッカ・アッラ・フィオレンティーナを再解釈して自身の経営するピサのレストランで提供したのが始まりです。同店は1978年ミシュランの星を獲得、1980年代に入りレシピが広まってピサ地域のほぼすべてのレストランで提供するようになりました。

ピサから日本へ世界へ広まったタリアータを、奈良特有のフレーバーと滋味深さで表現しました。

宇陀牧場井上牛タリアータ 奈良のフレーバーを添えて

宇陀牧場井上牛タリアータ 奈良のフレーバーを添えて

主役である宇陀牧場井上牛は、塊のまま低温でゆっくり火を通し仕上げに炭火で表面を焼いて切り分けました。生産者の「本当においしいお肉」への探究心の積み重ねにより生まれた牛肉の新鮮さと上質な肉質を味わうために、基本的で最適な料理法です。

奈良特有のフレーバーとして添えるのは、奈良漬けの抜き粕に漬けた「パルミジャーノ・レッジャーノの奈良漬け」、細かく削った「烏梅(うばい)」、大和まなで蘇らせた奈良時代の漬物「須須保利(すすほり)漬け」そして新鮮な肉の赤身と発酵熟成をつなぐのは奈良のハーブ「大和トウキ」

発酵と熟成を経たフレーバーを添えることで肉の表面のメイラード反応による旨みと自然につながりながら、一方で風味の個性が表面にあらわれることから、トスカーナを代表する赤ワインであるサンジョベーゼを想起させるタリアータが実現しました。

最もインパクトを与える最初のフレーバーは、パルミジャーノ・レッジャーノの奈良漬けです。今西本店の長期熟成した抜き粕のフレーバーは熟成した赤ワインの香りを想起させ味わいに奥行きを与えます。

烏梅のしっかりと燻された燻製香は肉の表面の炭火の香りを増幅し、真っ黒な外観を裏切るような梅の鮮烈で爽やかな酸味は若々しいキャンティを思わせ食欲をそそります。

付け合わせの野菜は、口中をリフレッシュさせつつ料理とトーンを合わせるためピクルスが必要だと感じました。そこで奈良時代の古代食でありぬか漬けの元祖ともいわれる「須須保利漬け」を、大和伝統野菜の一つ「大和まな」で再現しました。栗粉、ひえ、大豆粉、米粉で野菜を漬け込みます。栗粉や大豆粉の香ばしさが残る乳酸発酵は、繊細な大和まなと絶妙な相性を見せ異国情緒漂う味わいに仕上がりました。その複雑な香りは、熟成したサンジョベーゼの要素でもある森の湿った土や下草を思わせます。

五條市益田農園の大和トウキのオイルは、サンジョベーゼが持つハーブのようなフレッシュで野性的な香りと旨みで、肉の新鮮さと発酵や熟成のフレーバーを爽やかにつなぎます。

タリアータを主役とし、奈良特有のフレーバーを添えることでサンジョベーゼの特徴が揃いました。その味わいは滋味深さと共に未だかつてないフレーバーの組み合わせが新しささえ感じさせる一皿です。

料理誕生の経緯は note をご覧ください。

 

2024年度「ITALIAN WEEK 100」開催と参加のお知らせ

2023年から始まり今年も開催されることになりました「ITALIAN WEEK 100
当イベントは日本におけるイタリア料理の価値向上を目的としています。

第2回目となる2024年は11月1日(金)~30日(土)の1か月間開催されます。
日本全国北海道から沖縄まで、個性豊かなイタリア料理店100店舗で一斉に開催される大型レストランイベント「ITALIAN WEEK 100」
期間中、参加100店舗にて一つのテーマに基づき限定メニューが提供されます。

IW100-2024ロゴマーク

IW100-2024ロゴマーク

2024年度のテーマは「発酵の可能性 Power of Fermentation

大変光栄なことに、2年目の本年も参加させていただくことになりました。ありがとうございます。
発酵そのものを正しく学び理解し、更に奈良と日本の発酵文化を知るとその奥深さと可能性に驚かされます。奈良の発酵文化をイタリア料理で表すことで、発酵の新たな魅力を再発見いただけるようなメニューをお届けしたいと思います。

全国100店舗の100人のシェフたちはどんな発酵の可能性を見出すのか、今秋は国内イタリアンを巡る、イタリアン三昧の旅を計画されてはいかがでしょう♪

是非、ご期待ください!!

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IW100公式HP  https://italianweek100.com/

当店の掲載ページ https://italianweek100.com/ristorante-borgo-konishi/

 

◆今西本店純正奈良漬けのリゾット 大和茶のスープ茶粥仕立て ~Cyagayu~◆

「大和の朝は茶粥ではじまる」と言われるように奈良の伝統的な朝食、茶粥。
しかし実際に茶粥で育ったという方には、ほとんどお目にかかれない。
ご近所の80代の方々も経験がないという。
我が家の朝食に茶粥が登場したのも2020年からだ。

昨年誕生した、リゾットと茶粥を融合させた当店のシグニチャーメニューの一つ、”Chagayu”シリーズ。老若男女、海外からのお客様まで大変好評いただいている。
コースで提供するようになってから、幼少のころ茶粥を食べたという方にお目にかかれるようになり体験談を伺えることは大変嬉しいことだ。

中でも1200年以上続く東大寺修二会の練行衆の献立にのぼる茶粥と、ルーツが平城京にまでさかのぼる奈良漬けは、Chagayuの代表メニューといえる。

『今西本店純正奈良漬けのリゾット 大和茶のスープ茶粥仕立て ~Cyagayu~』についてシェフに話を聞いた。

今西本店純正奈良漬けのリゾット 大和茶のスープ茶粥仕立て~Chagayu~

今西本店純正奈良漬けのリゾット 大和茶のスープ茶粥仕立て~Chagayu~

<シェフ山嵜のCyagayuへの想い>
茶粥とリゾットを組み合わせたきっかけは、大和丸なすです。

毎年それぞれの食材の旬が巡ってくると、新たなメニューの可能性を探ります。
中でも10年以上お付き合いのある大和丸なすは大好きな奈良の農産物の一つです。2023年は3品、デザートまで誕生しました。そして大和丸なすは『旬を楽しむスタジオーネ コース』で奈良の食材にスポットを当てた季節限定のコース料理誕生のきっかけにもなりました。

特に『<炭火焼>大和丸なすのリゾット 大和茶のスープ茶粥仕立て』は、日本ならではの焼きナス、奈良ならではの大和茶の茶粥、イタリア料理のリゾットやミネストローネが渾然一体となった独創的なイタリア料理で、自分でも初めての発見に我ながら感激しました。

初めて参加した全国イタリア料理コンクール「米料理」の課題に王道のリゾットで出品し、イタリア人プロの料理人たちの審査の元優勝したことで得た自信と、老舗のお茶屋『田村青芳園茶舗』の店主自ら丁寧に焙じた香り高い大和茶と教えていただいた茶粥があったからこそ辿り着きました。

なぜか腑に落ちる味わいの不思議と、今までにない体験に嬉しくなり、奈良の茶粥について改めてさまざまな文献から学びました。

原型は東大寺修二会の練行衆のお夜食“げちゃ、ごぼう”にありました。
炭火で10時間煮出してまろやかにした番茶に米を入れ、炊けたら半量を味噌漉しのようなものですくっておひつに入れ蒸らします。これが“げちゃ”(あげちゃ)。残りはそのまま重湯になるまで炊いていきます。“ごぼう”(ごぼごぼ炊く音)です。

行を終えた練行衆が参籠宿所に戻ってくる時刻は深夜で日によって異なります。童子(練行衆の世話役)がお昼ごろから準備に取りかかり、練行衆の下堂時刻に合わせて炊き上げます。練行衆がそれぞれの体調に合わせてげちゃとごぼうの割合を調節できるように、また厳しい行に加え深夜就寝前であることから消化吸収への心配りが素晴らしい献立です。野菜の煮物やお漬物と共に食されます。

日本では805年に最澄と空海が茶の木の種を持ち帰り、奈良では806年に空海の高弟が宇陀市に種を蒔いたと伝承されています。
そして民間に広まるのは江戸時代、神職から奈良市小西町の井戸屋弥十郎に伝わり、旅人が1657年「奈良茶飯」として江戸で流行させ外食文化の始まりとなりました。

近代になり奈良の山間部の農家では「茶粥に始まり茶粥に終わる」というほど郷土食として定着します。毎日の茶粥に里芋やかき餅、さつまいも、奈良漬けなどお漬物を添え、特別な日にはお餅、と飽きないよう家族を喜ばせていました。マンマのパスタと同じです。このことから茶粥リゾットの組み合わせが広がりました。

やはり最も驚き感激したことは、当店の所在地である小西町が民間における茶粥発祥の地であり、外食文化のはじまりであることです。ボルゴ・コニシ(小西町)を名乗るリストランテとして天命を感じました。

現在、山間部には茶粥文化が残っていますがごくわずかです。
奈良の食文化を残すためにイタリア料理でできることは何かと考えたとき、茶粥という言葉を残すだけでもつなぐことができると考えました。
もはや古典に感じるものも工夫と洗練により伝承すれば、いずれ時が巡って歴史を遡る人が現れ復活し革新されて再び伝承されていく、そして伝統になると思います。

提供を始めてみると奈良出身の奥様が「そういえば幼少期に食べていた」と思い出されて、ご主人様が「初耳だ!」とお互いの、まだ知らないことがあったのかと思い出話に花が咲く、素敵な場面に遭遇しました。
また、社会人になられたばかりの若い女性が茶粥で育ち夕飯でも食べたいくらい大好きで、つい数年前まで日本全国の朝食は茶粥だと思っていた、と大変嬉しく頼もしいお話をしてくださいました。

こうしてリストランテ ボルゴ・コニシでは、大和丸なすをはじめ、大和伝統野菜の味間いも、宇陀金ごぼう、かき餅など奈良の季節を盛り込んだ定番の前菜となりました。
中でも茶粥の原型となった ”げちゃごぼう” は重要です。

毎年3月1日から14日まで東大寺二月堂で行われる修二会は、天平勝宝4年(752)に始まり、一度も途切れることなく令和6年(2024)の今年1273回目を迎えます。
この時期には料理人として世界平和への祈りを込めて、江戸時代末期創業の今西本店純正奈良漬けを添えてご用意いたします。

奈良で長く過ごしてきたからこそ生まれたリゾットと茶粥の共演『今西本店純正奈良漬けのリゾット 大和茶のスープ茶粥仕立て~Chagayu~』を是非ご賞味いただき、奈良の思い出に加えていただけますと幸いです。

今西本店純正奈良漬けのリゾット 大和茶のスープ茶粥仕立て~Chagayu~

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<参考文献>
『聞き書 奈良の食事(日本の食生活全集㉙)』農山漁村文化協会 出版
『茶粥・茶飯・奈良茶碗 全国に伝播した「奈良茶」の秘密』鹿谷 勲 著 淡交社

<参考サイト>
『東大寺ホームページ』修二会
『奈良県ホームページ』令和5年度 奈良新聞掲載「農を楽しむ」
『奈良の食文化研究会』
出会い大和の味 平成17年3月(70号)
           出会い大和の味 平成22年10月(133号)

◆ナポリ風キャベツの蒸し煮◆

待ってました!五條市 益田農園の寒玉キャベツの季節が到来しました。
葉がぎゅぎゅっと詰まった益田さんのキャベツ。とにかく大きい、重い!!
過酷な大自然と益田さんの共同作業による冬のごちそうに心より感謝申し上げます。

「自然からおいしくなーる、つまり霜が届くと作物は凍るものかと自ら糖分を蓄え、野菜らしさを発揮してきます」

この季節のキャベツは、サラダ向きの柔らかい春キャベツとは異なる寒玉キャベツで加熱調理に向きます。益田さんのおっしゃる通り、五條の高地で寒さに耐えたキャベツの甘みは火を通すと格別。

ボルゴ・コニシの冬の前菜『ナポリ風キャベツの蒸し煮』をご紹介いたします。

ナポリ風キャベツの蒸し煮

ナポリ風キャベツの蒸し煮

水を加えず野菜自身がもつ水分のみで蒸していく。
この料理法は、野菜を敢えてくたくたになるまで火を入れることで隠れていたその野菜の魅力を引出す。歯ごたえを残して火入れする美味しさとは違った野菜の真価が問われる料理法だ。
中でも益田さんの寒玉キャベツは、それを如実に表す。口中に広がるキャベツの香りと甘み。

奈良の牧歌的な風景が目の前に広がった。

大地の養分をたっぷり蓄えた益田さんのキャベツを鍋に入れ、香りづけ程度の少量のパンチェッタの皮とパルミジャーノレジャーノの皮を加えて1時間ほど蒸す。素材そのままの風味が逃げることなく凝縮されていく。
冷ましてから、アクセントとして冷たいバターとごく少量のアンチョビを添えピスタチオを削る。以前は風味を補うためにサルシッチャを添えていた。
益田さんのキャベツには無用だ。

寒さが和らぐような心温まる、冬ならではのごちそうだ。

2023年10月の益田農園キャベツ畑

2023年10月の益田農園キャベツ畑

ナポリ風キャベツの蒸し煮

ナポリ風キャベツの蒸し煮

 

◆パネトーネのチーズケーキ 自家製リコッタを添えて◆

ボルゴ・コニシの年始の定番ドルチェ『パネトーネのチーズケーキ 自家製リコッタを添えて』をご紹介します。

パネトーネのチーズケーキ 自家製のリコッタを添えて

パネトーネのチーズケーキ 自家製のリコッタを添えて

イタリア、ロンバルディア州ミラノ発祥と言われているクリスマス銘菓『パネトーネ』

パネトーネは、刻んだドライフルーツがたっぷり入った大きなブリオッシュのようなパン菓子で、特殊なパネトーネ種を用いた長期発酵菓子パンの一つだ。

その保存期間の長さも驚異的だ。
毎年初夏にあらかじめ注文し、12月上旬にイタリアより入荷するボルゴ・コニシお気に入りのスカルパート社製は、常温で賞味期限が翌年3月末までという長さを誇る。
特に真空になっているわけでもないし、カタカナや化学記号で表記された想像のつかない“食材”が入っているわけでもない。オーガニックであることは食べてみれば明らかで、一体どうしてこんなことが可能なのかと驚くばかり。

その秘密は特殊な発酵種 ”パネトーネ種” にある。
パネトーネ種は、生まれたての仔牛が初乳を飲んだ後の腸内から取り出した物質と小麦粉を混合し培養・発酵させて作る発酵種だ。ロンバルディア州北部のコモ湖周辺でのみ採取・培養されており、酵母と乳酸菌が共存している大変珍しい複合酵母である。
パン屋や菓子屋はその酵母から自家製のパネトーネ種を増やし育てていく。そして年末に向けて年に一度パネトーネを焼く。パネトーネ種の取扱いには高度な技術を要する。
現在では、時には季節問わず日本でも 自家製パネトーネなど見かけることもあるが、是非本来のパネトーネとイタリアならではの食文化も味わってみて欲しい。

その素晴らしい技術は認めるものの、当初はさすがに多湿の日本であるから怖くて年内に消費していた。しかし、イタリアでは年が明けるとセールになったパネトーネが各家庭では人気の朝食となり、レストランはドルチェとしてふるまうという食文化を知った。夢のよう・・・叶えたい!!

恐る恐る3月末まで放置してみたが全く問題なし。軽くトーストしてホイップやザバイオーネソースと共に、フレンチトーストにリメイクしても素晴らしい。
年末に賞味期限の長い本物のパネトーネを見かけたら多めに購入し、年始にご家庭で是非お試しいただきたい。

そして2022年、リストランテとしてボルゴ・コニシオリジナル、パネトーネドルチェが誕生した。それ以来、年始の恒例ドルチェで、お客様からリクエストをいただくようになった。嬉しい限りだ。

パネトーネが本来の味わいを越えて美味しくなるように、がシェフ山嵜のいつもの絶対条件である。
パネトーネとマスカルポーネでチーズケーキを焼き、間に自家製のリコッタクリームを挟む。仕上げに大和橘とインドの黒糖“ジャグリー”を削って添える。

パネトーネの最大の魅力である、長期発酵によるふくよかで味わい深い風味を際立たせるマスカルポーネの優しい風味が合わさり、しっとりと複雑な味わいのチーズケーキに様変わり。表面の少し焦がしたところもキャラメリゼされて美味。
間に挟んだフレッシュな自家製リコッタクリームがさり気なく、濃厚なチーズケーキとドライフルーツを軽やかに引き立てる。大和橘の香りがフレッシュさを演出し、ジャグリーの甘いくちどけが心地よい。

毎年この季節が待ち遠しくなる、シェフ山嵜のオリジナル パネトーネドルチェ。是非、ご賞味ください。

◆奈良のほうせき シキシキ・シュマーレン◆

ボルゴ・コニシの新たなドルチェ『奈良のほうせき シキシキ・シュマーレン』をご紹介します。

奈良のほうせき シキシキ・シュマーレン

奈良のほうせき シキシキ・シュマーレン

このインパクトのあるネーミング、ふざけているわけではない。紛れもない奈良の郷土食とイタリア食文化の融合を実現した、シェフ山嵜の真骨頂、いわば『奈良スローフードイタリアン』を表現したドルチェである。

『奈良スローフードイタリアン』とはシェフ山嵜の造語である。
奈良の郷土食を現代的イタリアンで表現することで楽しさやおいしさを伝え、奈良の歴史や文化に興味を持ってもらう架け橋となるイタリア料理の総称である。

スローフードは、1986年イタリアのカルロ・ペトリーニにより提唱された国際的社会運動で、ファストフードに対し唱えられた。その土地の伝統的な食文化や食材を見直す運動が現在160ヵ国以上で地道に続けられている。

シキシキ・シュマーレンは、古来小麦栽培が盛んな奈良の”ほうせき”「しきしき」とイタリアのトレンティーノ=アルトアディジェ自治州のカイザーシュマーレンを融合し、奈良の郷土食を現代的イタリアンドルチェで蘇らせた。
トレンティーノ=アルトアディジェ自治州は、第一次世界大戦までハプスブルク家領の一部であったオーストリア=ハンガリー帝国の統治下にあったため、現在も公用語は主にイタリア語とドイツ語である。

奈良の方言でおやつを表す「ほうせき」

奈良県桜井市は扇状地で、8世紀には朝廷が小麦や大麦の畑作を奨励したこともあり、昔から小麦の栽培が盛んで、水車で挽き料理やおやつに使用してきた。
万葉集には「麦」が登場し、三輪素麺は古来の名物である。
戦前には、小麦粉に水と砂糖を加え薄く焼いた「しきしき」というおやつがあった。
當麻の辺りでは最近まで提供していたお店があったようだ。

一方、オーストリアの有名なデザート「カイザーシュマーレン」は、北イタリアのトレンティーノ=アルトアディジェ自治州でも人気だ。オーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ1世(19世紀後半から20世紀初頭のハプスブルク家のオーストリア皇帝)が好んだデザートという逸話から「皇帝(カイザー)が好んだ、引き裂いた(シュマーレン)パンケーキ」と呼ばれている。(なぜパンケーキが引き裂かれていたのかについては、皇后エリザベートの美貌に関わるのだが、ここでは割愛させていただく)

そして生まれた『奈良のほうせき シキシキ・シュマーレン』

小麦粉は奈良県産小麦ふくはるかを使用。中力粉であるため、薄力粉を使ったふわふわホットケーキでもなく、クレープのような薄いもちもちでもない、丁度中間の厚みで絶妙な食感に仕上がった。カイザーシュマーレンは強力粉を使用するためもっちりとした歯ごたえがある。
しきしきには黒糖が使われたことから、シェフお気に入りのインドの黒糖 ジャグリーで素朴ながら洗練された風味に仕上げ、レーズンを混ぜ込む伝統的なカイザーシュマーレンの要素を取り入れた。
オリーブオイルをベースに大和橘とヘーゼルナッツを加えたソースは、巻き込まれたパンケーキの間からキラキラと宝石のようにこぼれ落ちる。
シキシキ・シュマーレンにほんのり染み込ませたエスプレッソが香り、アクセントに忍ばせたザバイオーネソースが全体をまとめる。
大和橘の爽やかな酸味が良いアクセントとなる。

奈良で生まれたシキシキ・シュマーレンもカイザーのお気に召すことだろう。

 

参考文献:『聞き書 奈良の食事(日本の食生活全集㉙)』農山漁村文化協会 出版

 

 

 

2023年度『ITALIAN WEEK 100』ありがとうございました。

全国100のイタリア料理店による『ITALIAN WEEK 100 ”パスタの未来形”』

皆さんは、どんなパスタ未来形を体験しましたか?

城さんと大和橘の畑にて

城さんと大和橘の畑にて

参加店として取り組んだことで、リストランテとして今後の展望がより明確になった大変良い機会となりました。
ITALIAN WEEK 100関係者の皆さま、当店を支えてくださる全ての生産者と関連各社の皆さま、奈良県の農畜産品やフードツーリズム、食文化や水についての今と今後についてご教示くださった奈良県職員の皆さまに、この場を借りて心より感謝申し上げます。

以下、オーナーシェフ 山嵜正樹よりお礼申し上げます。

今年の初めITALIAN WEEK 100参加のお話をいただきました。奈良を全面に押し出し思う存分PRしてもよい機会をいただけると思い、即座に参加を決めました。

まず奈良県庁に問合せ、奈良県が考えるフードツーリズムやテリトーリオについて教えを請い学び、継続可能な未来を目指す生産者を探すことから始めました。

識者のお話しに加え、前田農園、益田農園、辰誠園を訪れ当主の方々より具体的なお話しを伺う機会を得ました。

そこからインスピレーションを受け、奈良に関する様々な発見と自分なりの発明を料理に変換し、お客様に追体験いただけるようなコース料理を考えました。

奈良在住のお客様からは「奈良に誇りをもてた」県外からのお客様には「奈良にまた来る理由ができた」などのお声をいただき、奈良の伝統と滋味深さを料理によりお伝えできたのではないかと嬉しく思います。

料理を通して未来を考えることは、歴史を振り返ることに始まり、何よりも未来を作る ”今” にフォーカスすることでした。
今、この瞬間の積み重ねからしか未来は生まれない、見て歩き “奈良を食べる” 体験をしたその瞬間から、心身ともに豊かになれるフードツーリズムを形にし提供する機会をいただいたことに、心より感謝申し上げます。

リストランテ ボルゴ・コニシ
オーナーシェフ 山嵜正樹

 

~感謝を込めて ITALIAN WEEK 100 特別コース 奈良の食材~

<フィンガーフード ~ようこそ奈良へ~>
御殿ハチミツ/大和郡山城 柳沢文庫
奈良漬け/奈良市 今西本店
大和大鉄砲豆腐/奈良市 三木食品
古代ひしお/奈良県醤油工業協同組合

<味間いものリゾット 大和茶のスープ ~茶粥 Chagayu~>
味間いも/磯城郡 『田原本町味間いも生産者の会』会長 西浦 正嗣 様
米(2022年産をもって販売終了)/磯城郡田原本町 株式会社鎌田ファーム
大和茶/奈良市 田村青芳園茶舗
*参考文献 『茶粥・茶飯・奈良茶碗 全国に伝播した「奈良茶」の秘密』
鹿谷 勲 著 淡交社

<ボスコ・ディ・ブロッコリー>
ブロッコリー/五條市 益田農園

<アクア・ディ・ポモドーロ>
トマト/奈良市 前田農園
大和橘/大和郡山市 なら橘プロジェクト

<ボリートミスト ~大和 YAMATO~>
倭鴨/御所市 鴨重
ばあく豚/五條市 ばあく(泉澤農園)
井上牛/宇陀市 宇陀牧場
梅/宇陀郡曽爾村 曽爾村農林業公社
吉野葛/奈良市 千代乃舎竹村

<桂のリーフティーのグラニータとヘーゼルナッツ ~クロッカンテ~>
桂の葉/奈良市小西町

<柿のアマレッティ 柿酢のジュレと吉野ニッケイを添えて>
柿/吉野郡下市町 辰誠園
柿酢/五條市 柿の専門
吉野ニッケイ/奈良市 結月

<小菓子>
ストライプペポの種/奈良県農業研究開発センター

<パン>
大和橘の花の酵母/奈良県産業振興総合センター

 

《 SPECIAL THANKS 》
イタリアンウィーク100 事務局 吉田 実和 様(株式会社veritaヴェリタ
ITALIAN WEEK 100 ディレクター 池田 匡克 様
アマゾンカカオ/長野県軽井沢 ラ・カーサ・ディ・テツオ オオタ
チーズ/京都市烏丸御池 フロマージュ ドゥ ミテス
オリーブオイル/神奈川県鎌倉市 オリーブオイル専門店ヒナタノ
奈良県豊かな食と農の振興課
奈良県産業政策課
なら食と農の魅力創造国際大学校
奈良のうまいものプラザ
飯田徹写真事務所

広報PR(五十音順): ETSUKO 柴 美木 多分日刊梅ぽすと Chiho

 

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毎日の小さな選択が未来を創造する
リストランテ ボルゴ・コニシは
心と体が豊かになる未来に向かって選択を続けます

2000年前から変わらない風景の前で山の辺の道沿いにある大和橘畑を見下ろして

2000年前から変わらない風景の前で山の辺の道沿いにある大和橘畑を見下ろして

吉野下市町 辰誠園と五條市 益田農園を訪ねました

ITALIAN WEEK 100 ”パスタの未来形” 『アクア・ディ・ポモドーロ』を主役とした特別コースでは、奈良の未来の水をテーマにするとともに、奈良とイタリアの食文化の融合を試みた。

レストランで各地地元の食材を使うということはもはや当たり前の昨今、日本風にアレンジするということでもなく、奈良で過ごす料理人 山嵜正樹を介して生まれたイタリア料理に表した感動を、奈良を食べる体験により皆さまと共有できればと願う。
100店のイタリア料理店が100人のシェフを介して、日本全国の11月の食材を一斉にお皿にのせる、つくづく画期的なイベントだと感動している。
この度は、参加させていただき心より感謝申し上げます。

肝となった前田農園さんのトマトから生まれた、ボルゴ・コニシの『パスタの未来形』アクア・ディ・ポモドーロ。前田さんのトマトとの出会いからイベント開催までの間、コース料理としての前後を支える11月の奈良の大地の水の恵みを象徴する、素晴らしい食材に恵まれた。

その中から9月に訪れた吉野下市町 辰誠園と五條市 益田農園をご紹介する。

奈良市から車で1時間半、まずは念願だった五條市役所横の”柿の専門 いしい”さんが運営するにぎわい棟にて柿尽くしランチ♪

カッキー

にぎわい棟

にぎわい棟

KAKIHAうどん 柿の葉寿司セット

KAKIHAうどん 柿の葉寿司セット

いしいさんの柿酢は、今やボルゴ・コニシの料理に無くてはならない存在。リコッタを作る時などにも使う。
今回のIW00特別コースでは最後を飾る、辰誠園さんの柿のドルチェにジュレにして添える。

柿尽くしランチで大満足の後、辰誠園さんへGO!五條市役所を出てあっという間に山道に入った。山は深く美しい。
しばらく行くと車がひっくり返るのではないかと思うような急勾配を上って直後、相当鋭角なカーブを下ると突然立派な門柱、辰誠園さんに到着した。ちなみにレンタカーだが、毎回カーナビの進化ぶりに驚かされる。

居間でお話を伺った。サラリーマンだった辰巳さんは、家業を継ぐことを決心した。現在、柿、梨、さくらんぼを生産されている。
その昔、奈良県でさくらんぼの生産者を増やそうという取り組みがあった初期から、唯一成功し生産を続けている生産者だ。いずれの果物も樹上完熟で生産量が限られることから直売のみ。長年のお客様へ毎年お届けするだけで精一杯。
辰誠園さんの果物を一口食べれば納得である。

伺う前に梨を送っていただいた。梨の個性である見た目と食感に表れたひと粒ひと粒の果肉が微細で、各粒の表皮(というかは、わかりません)が薄く均一に隅々まで綺麗に並んでいてそれぞれが美しい果汁をたっぷり蓄えている。間違いなく香りも味も梨だが、梨とは思えないシルキーな口当たり。エレガントな味わいと相まって気品さえ感じる。
最も好きな果物は梨である、と梨を見かけるたびに言い切るシェフ山嵜は絶句していた。

家業を継ぐなど頭になかったため、ほぼ一からの出発。まずは、ご近所付き合いから。そこには独特な古いしきたりに窮屈さを感じるかもしれないが、山深い過酷な自然の中で人々が共に生きるために積み重ねた、人間の英知を感じた。山で学んだことは街の生活にも活かせるが、街の生活しか知らなければ山では暮らせない、人々のつながりも同じなのかもしれない。

今年は暑く栽培にとても苦労したこと、そして年々難しくなっていること、それでも長年のお客様が待ってくださっているから頑張れる。お話を伺いながらいただいている梨とリンゴ(これまた凄い!!)に時々「う、旨っ!!!!」と思わず叫びそうになるのを抑えつつ、なんとか作り続けて欲しい!!!と願わずにはいられなかった。

今までなかった現象も。
アジアから日本の友人を介してやって来て突然門を叩く外国人御一行様。いくらでも払うからと言われても、無いものは無い。なんとか少しお出ししたら瞬く間に完食し、美味しかった!!!と大喜びで去った、なんてことも。SNSで見て美味しそうだったから、だそうだ。お目が高い!

さぁ、いよいよ畑へと思いきや「お見せするような畑はないのですよ」と照れたようにおっしゃって指さされたその先には、梨の木も柿の木も、元からそこにあったかのような形で山の斜面に生えていた。
山野草(雑草という言葉に抵抗を感じ困っていたところ、お客様に教えていただいた素晴らしい呼び名!)はそのままに畑内を歩き、観察し、感じ、見守り、樹上で完熟するまでサポートする。
ご本人もおっしゃる通り、今まで見た柿園とは全く違う景色だが、放っているように見えて放置どころか一日中畑の中で仕事をしていることがわかるような、木の周りの山野草さえ絵になる畑だった。
そのことは辰巳さんの作った果物が証明している。

ご子息は農学を修められ、また昆虫を専門とされており、現在奈良県の農産に携わるお仕事をされている。息子さんのアドバイスなども参考にしつつ、山野草と昆虫の正しい生態系による農法を取り入れている。

「今年の柿は難しいかも・・・暑すぎて現在(9月中旬)心配なくらい先行き不透明なんです」と11月の出荷どころか2023年の出荷ができるかどうか、ということだったが、11月中旬目一杯果汁を蓄えた富有柿が届いた!!

食べてみてまたもや絶句。樹上完熟のためお早目に、とのことだが日ごとにポテンシャルの高さを感じる。ゆっくりと確実に追熟していく。まだ熟す余地があったのかと驚いた。
入荷から2週間たった現在、ドルチェの柿のアマレッティに最も理想的な状態だ。

高品質なチーズやワインと同じように感じた。
生産者からバトンを渡された後、適切に環境を整えて見守るだけで最後まで迷わず熟成していく。
出荷までに強くたくましく育ち、自立できる安定した品質まで成長しているからだろうと思っている。
そこから伝わる生命力にただただ感謝するばかりだ。

辰誠園さんを知ったきっかけは息子さんとの出会いだったが、果樹園のご子息と知らず味覚の良さから「お好きな柿農園はありますか?」と伺った際、「うちの柿です。特に生産者の個性が現れる富有柿は日本一だと思います」と即答断言されたことを頼もしく思い出した。
今回、ITALIAN WEEK 100のコースで県内外のお客様に広くご紹介できたことを大変光栄に思う。見た目の美しさと気品溢れる柿の味わいに、大変ご好評をいただいた。
辰巳さん、本当にありがとうございました。

辰巳さんご夫妻と

辰巳さんご夫妻と

お次は車で十数分の五條市 益田農園さんへ。
途中、所要時間と場所がわからず訪問を断念していた、へいばらのレモングラス畑を偶然発見し大興奮!!どなたもいらっしゃらなかったので残念だった。
美味しいハーブティをいつもありがとうございます!!(畑に向かって愛を叫ぶ)

店頭で強烈に美味しい益田印ブロッコリーに出会ってから、キャベツ、玉ねぎ、トウモロコシ、大和トウキ、柿、と全益田印を制覇している追っかけファンとしては、この日を待ちに待っていた!!

出迎えてくださったのは益田農園のホームページと全く同じ、満面の笑みをたたえた益田さん。ただにこにこと普通にお話をされているのだが、なぜか周りの山から笑い声がこだまとなって聞こえてくるような気がして仕方がない。つい私も笑ってしまう。
奈良市に帰ってその後も、落花生、もものすけ(カブ)、あんぽ柿、と追っかけを続けているが、お会いしてからは益田印に触れるたび五條の山のてっぺんに大きく浮かぶ益田さんの笑顔が脳裏によみがえる。そんな景色は決して見ていないのだが。

益田さんのブロッコリーによってボスコ・ディ・ブロッコリーが遂に本当の意味で完成したこと、そのブロッコリーがいかに素晴らしいか、そして益田さんにどうしてもお会いしたいと思って来たことを伝えると、とても言いにくそうに「そんなに思って来てくれて申し訳ないんだけど・・・ブロッコリー植えたのは、全てキャベツのためで・・・ほんと遠くまで来てもらってすみません」(ニコニコ)

益田さんの発見はこうだ。
キャベツは重い、確かに益田さんのキャベツはとても重い、収穫の際は畝の間にトラックを入れたい、そうすればトラックの荷台にキャベツを載せながら収穫できる、しかしトラックのために1畝無駄にするのがもったいない、キャベツより収穫が早くできる野菜は?キャベツの一種で丁度いい野菜があった、それがブロッコリー!
「すみません。どうしてあんな美味しいブロッコリーができるんですか?と言われてもわからないです。普通のことしかやってないしな~、なんやろ?次からちゃんと考えてやってみます、ワッハッハ」(私達もワッハッハ)

私たちは訪ねる以前から、それが益田さんの凄いところだと思って伺ったので逆に恐縮した。益田さんが作るいずれの野菜からも、益田さんと大地と植物が対話し協力してできたのだと感じる。3者いずれも無理をしていない。味わいに濁りが一切ない。
益田さんは特別なことは何もしていない、と思っていらっしゃるが前述のように、作物と大地とずっと対話をして収穫まで共同制作をされているのだ。
土地ごと、作物ごとの細やかな独自の対処方が、各生産者ごとにあると感じるが、対処と工夫が無限に広がるため最低限のルール以外は決まった方法などない。言語化が困難になるのは当然だ。料理のレシピはあっても行間まで教えることは困難であるように。

野菜が私たちに味わいで伝えたように、畑はそのことを言語化していた。

益田農園キャベツ畑

益田農園キャベツ畑

広大な畑は美しく、畑を囲む森林からも生命力を感じる。そして山から笑い声が。幻聴?
柵で囲ってあるがイノシシや鹿が増えているそうだ。
「お互い生きるため本気です。できるだけ未然に防ぐけど、やむを得ない場合もある」駆除のため狩猟免許を取った。

山の上の方の日当たりの良い畑と、森林に囲まれた別の畑では、同時に植えたキャベツの生育状態が全く異なる。後者は随分小ぶりで生育が遅れているようだが、いざというときまでキャベツの好きにさせておく方針のようだ。その時の対処法はいくつか益田さんの頭の中にある。
畑とキャベツの力を最後まで信じて待つ。

大和トウキも素晴らしい。咲き始めた花の香りがそこかしこに漂っている。

益田農園 大和トウキ畑

益田農園 大和トウキ畑

益田さんと大和トウキ畑にて

益田さんと大和トウキ畑にて

県のプロジェクトに賛同して毎年育てているが、今のところ相変わらず中国産との価格競争に勝てず製薬企業も購入してくれないため収支が合わず、存続が難しいとのこと。
当店も、漢方用に根を育てるため葉を食用にするプロジェクトの当初に関わったが、独特な香りが難しいと感じている。
ただ、今までの中で増田農園の大和トウキが最も食味が良い。グーラッシュに添えると完成度が上がる。やっとイタリア料理に活かせて大変嬉しい。

落花生も元気いっぱいだ。

益田さん 落花生畑にて

益田さん 落花生畑にて

「まだ若いけど食べられるし、逆にこの(若い)状態で売ってないから一本持って帰ってみる?」と抜いてみたら思わず笑うくらいたわわに実がなっていた。

益田さんの落花生

益田さんの落花生

なんと大きい枝!と騒いでいたら「あれ?半分やな。これもう半分ね。1本分持って帰ってよ」
大きい!何?このサイズ!育ちすぎ!面白すぎ!

益田印落花生一本分収穫の図

益田印落花生一本分収穫の図

帰りに凍らせた柿を、すぐに食べるようにといただいた。まるで干し柿のような熟柿。糖度が高いため半凍りで、あの美味しさは一度食べたら忘れられない。
「また来てくださいね!」と見送ってくださった増田さんの笑顔と相まって、美味しいと言うために引き返しそうになった。

翌朝、枝から外し選別した落花生は、増田さんがおっしゃっていた通りまだ若く、爽やかな青さと僅かな渋みが印象的だった。その後、完熟し店頭に並んだ益田印の落花生を購入したことは言うまでもない。

奈良って、日本って本当に素晴らしいと改めて思う旅となりました。
辰巳さん、益田さん、お忙しい中お時間をいただきパワーをいただき、本当にありがとうございました。

益田農園のヤマトトウキの花

益田農園のヤマトトウキの花

2023年度『ITALIAN WEEK 100』パスタの未来形”アクア・ディ・ポモドーロ”のトマト生産者、奈良市前田農園さんをご紹介します

11月18日㈯~26日㈰、日本全国北海道から沖縄まで、各地域のイタリア料理店100店舗にて一斉に特別メニューが振る舞われる、大型レストランイベント ”ITALIAN WEEK 100” テーマは『パスタの未来形』
参加の打診をいただいた年始、すぐに閃いたテーマ ”水” と未来永劫イタリア料理を最も象徴すると考えた ”トマト” 

そして生まれた、アクア・ディ・ポモドーロ

前田農園のトマトに出会うまでは、イタリア産のできるだけ手を加えていない瓶詰や缶詰のクラッシュトマト、ドライトマトなどを数種ブレンドし、生のトマトを加えたりしながらトマトソースを作っていた。

改めて探してみると、奈良市に味よし品質よし且つ持続可能を地で行くトマト専業農家さん在り、との情報で2月20日前田農園さんを訪ねた。

ご紹介いただいたものの2月、しかも奈良は極寒。ところがトマトについてよく調べてみると味の旬は3月と判明した。ちなみに夏は収穫の旬。
イタリアでは、料理に使うトマトは旬だけ食べるというより加工保存し翌年の収穫まで年間を通して消費していくため、3月の味の旬にしっかり蓄えておけるという、理想的なタイミングでの出会いだった。

奈良市前田農園にて前田さんと

奈良市前田農園にて前田さんと

イチゴ農家に囲まれた前田農園さんも代々イチゴ農家だった。トマト専門へと大きく舵を切ったのは、3代目である当代の前田伸一さんだ。
「みんなに不思議がられ、無理だと言われ、迷惑もかけた。でも、同じくらい助けてもらった。」優しく強いまなざしから、生まれ育った土地を愛する人の信念が垣間見られる。

現在、前田さん家族とパートさんも合わせ10名ほどで20基のハウスを管理する。当代指揮の元、栽培から袋詰めまで女性陣の細やかな心配りが感じられるトマトだ。桃太郎トマト「大和の恵」とフルーツトマト「あかつきトマト」の2種を生産販売している。
枝で完熟させてから収穫するため、自分たちで納品できる距離と数量を徹底している。そのことが高品質を保つことに繋がっている。

収穫期は2月から7月。真夏は太陽熱を利用してハウス内の土を殺菌し土作りを行う。たい肥は自家製にチャレンジしつつも、「餅は餅屋」という考えからプロの作った優良なものを使用している。

桃太郎の品種に関して生産量が落ち着いてきていたが、新たな害虫が目立つようになった。九州に生息する害虫が数年前から奈良を含め他府県で見られるようになったのだ。
この害虫に対処した新桃太郎が現れたが、以前の桃太郎より非協力的で生産者泣かせ。「俺は俺」と我が道をいく品種。
それでも以前の品種はこの新桃太郎に取って代わられている。なんとかご機嫌を伺いながら「二人三脚でやっていくしかない」と前田さん。
確実に困っているのだが、どこか楽しんでいるようにも見受けられる。蓄積した技術、知識、経験豊富ゆえの更なるチャレンジ精神。トマトも安心して身を任せ伸び伸びと育つのだろう。

ハウス内へご案内いただいた。

ビニールハウスは二重構造で外側が紫外線カットになっているため、虫にとってハウス内は暗黒世界だ。そうとは思えない日光の熱を感じる明るさ。やはり多少の日焼けは免れないとのこと、残念。
暗黒世界となると蜂による交配はできないが、害虫の侵入を防ぎ減農薬を優先している。害虫を極力入れないとなると、気温調節が問題となる。
細かい設定ができるタイマー機能を使って24時間のこまめな気温調節と扇風機による空気循環により、急な気温変化の心配がない上、トマトの生育に適した乾燥環境を実現した。以前は、天候の急変が心配になると夜中でも確認に行っていたそうだ。
作業の軽減は効率化にもつながり、結果、家業として持続可能となる。

土壌にも工夫が施されている。盆地である奈良の元来水田だった土地をトマトに最適な枯れた土壌にするため、ナスに接ぎ木してトマト自体は水を吸わないようにしている。水は井戸水をドリップで枯れない程度にごく少量与える。

前田さんが栽培する「大和の恵」と「あかつきトマト」はいずれも桃太郎トマト。同じ品種を土と液肥の違いによりハウスを別々にして作り分けている。

フルーツトマトに仕立てる「あかつきトマト」には「大和の恵」より濃度の濃い液肥を与える。液肥でトマトの濃い味が作られるわけではなく、濃度を濃くして植物に水を吸わせないようにする。カルピスの原液が飲みにくいのと同じだ。

トマトは水が足らず空気中の水分まで得ようとして茎やへた、実にも産毛を生やす。前田さんのトマトには茎から葉っぱまで全てにびっしりと産毛が生えていた。ものすごい生命力だ。息遣い(光合成)の音さえ聞こえてきそう。産毛はトマトが熟しても消えない。

奈良市前田農園にて

奈良市前田農園にて

株の仕立ては、全国一のトマト産地である九州に見学に行き思いついた独自の方法で、枝を斜めに誘導する。できるだけ茎を長く伸ばし収量を上げることが可能となり、収穫する位置を低く保てることで作業が楽になり効率も上がる。

奈良市前田農園のトマトの仕立て

奈良市前田農園のトマトの仕立て

ハウス内の隅々まで清潔で手入れが行き届いている。トマトがとても心地よく過ごしていることが感じられる。

前田さんは親世代から受け継いだ全てに感謝しつつ、古きものはなくし良いものだけを引継ぎたいと強い意志で語った。
中でも目の前で増えていく耕作放棄地は、待ったなしの状況だと危惧する。生まれ育った里山を守るため、行政にも積極的に協力し耕作放棄地の区画整理や共同生産を提案、学校では体験学習など定期的に行っている。

「イチゴからトマトへ転換し多くの人に助けられた。恩返しをできるだけしたい。せめて孫の代までは自分にできることがある」

前田農園は、娘さんご夫婦が後継者として活動を始めている。

前田さんのトマトを初めて食べたとき、歓喜した。体中の細胞が欲し、みるみる吸収していく感覚。一度食べたら忘れられない味わい。
前田農園のスタッフの皆さまが口々にするのは「前田さんのトマトが美味しすぎて、働かせてもらって10年以上になります」中には20年なんて方も!!「いろいろな年(の味)があるけど本当に美味しい!毎日食べてます!」

収穫のお忙しい中、前田さんには貴重なお時間をいただき、飲食業に携わる上で今後の指針となるような貴重なお話を伺いました。この場をお借りして心より感謝申し上げます。

ちなみに、ワインのインポーターをしているイタリア人に味見をしていただいたところ「日本で、奈良で、こんな美味しいトマトが穫れるとは、心から驚いている」
味見をしていただいたのは7月。前述の通り収穫の旬の時期だが、彼は3月の味の旬に収穫したトマトで作ったソースだとまで言い当てた。
更に、7月でこの品質だとしたらイタリアのトマトより凄いということになるが、3月なら多少納得できる、ただ、日本でここまでのトマトには出会ったことがない、しかも奈良市とは信じられない、と驚きを隠せないようだった。

私も驚きを隠せなかった、彼の凄すぎるテイスティング能力!!
彼の正体は、トマト産地で有名なプーリア州のトマト農家のご子息だそうで、インポーターをする以前、イタリアでは長らく星付きレストランでソムリエの経験があり、このテイスティング能力によりシェフから絶大な信用を得て、共に新作料理の完成にも携わっていたそうだ。
その後、料理とワインのペアリングについて、彼の持論を聞きまくったことは言うまでもない。そして、彼が輸入するワインを購入した。

この素晴らしい前田農園のトマトの純粋な ”水” を抽出した、リストランテ ボルゴ・コニシのパスタの未来形『アクア・ディ・ポモドーロ
11月18日(土)いよいよリリースです!!お楽しみに!!

アクア・ディ・ポモドーロ

アクア・ディ・ポモドーロ

2023年度『ITALIAN WEEK 100』特別コース

2023年度「パスタ未来形IW100特別コース」についてシェフ山嵜正樹の解説をまとめました。
お料理ごとに
●料理名
●コンセプト
●ソムリエ山嵜の味わいポイント
●食材など補足説明
の順に並んでいます。

日本とイタリアの食文化の融合と革新、そして美しい地球の未来への想いを込めて。

2023年度《ITALIAN WEEK 100 特別コース》
Pane パン◆
大和橘の花から採取した酵母を使った、自家製イタリアパンを数種類お楽しみいただけます。
長時間熟成による小麦粉の優しく深い味わいがお料理を引き立てます。

Stuzzichino フィンガーフード◆
Benvenuto NARA ~ようこそ、奈良へ~
蘇蜜 ~かぎろひ~
アマゾンカカオニブを練り込んだグリッシーニと奈良漬
醤(ひしお)と大和大鉄砲豆腐のラビオリ 山椒のフレーバー

IW100フィンガーフード

IW100フィンガーフード

フィンガーフードは、奈良の古代の食文化をイタリア料理法で現代的によみがえらせ紹介します。
蘇蜜のかぎろひは、コースの幕開けを表すと共にSDGsなどに見られる世界共通の次なる平和的ステージの幕開けへの想いを表しました。

  • 蘇蜜:牛乳を焦がさないよう丁寧に煮詰めて作る蘇(そ)は優しい甘さとホロホロとした食感が特徴。竹炭を練り込み闇夜に浮かぶ三笠山の景色を表した。パプリカパウダーはかぎろひの空の色を表すと共に、爽やかな苦みを伴うフルーティさでミルクの甘みを引き立てる。全体を“御殿はちみつ”の純粋な甘さがまとめる口福感を味わえる。
蘇とは・・・古代の日本(飛鳥時代~平安時代)で作られていた乳製品の一種。
蘇蜜は薬として平安時代、藤原道長も食したとされる他、甘い美味なものの例えでもある。
竹炭を加えて作った蘇の表面にかぎろひ(厳冬の良く晴れた日の出前、東の空を彩る陽光)をパプリカで表現。
ハチミツは郡山城跡に設置した蜂の巣箱から2023年春に採取した無添加無調整の“御殿はちみつ”を使用
  • グリッシーニ:奈良市三条通の老舗 今西本店(江戸時代末期創業)の8年熟成胡瓜の純正奈良漬けと、カカオニブの発酵を経た熟成感をグリッシーニでつないだ。新たな味わいのハーモニーをイタリア食文化で表現した、国籍問わず誰もが頷く一品。
  • ラビオリ:醤油の搾りかすの粉末を練り込んだ生地で醤(ひしお)と奈良の在来大豆「大鉄砲」で作った大和大鉄砲豆腐を詰めたラビオリ。古代の食文化を現代に復活させた醤の香りと味をラビオリに閉じ込めた。山椒がエレガントに爽やかに、味蕾を覚醒させる。
醤(ひしお)とは・・・醤油や味噌のルーツと言われる。奈良時代の「穀醤(こくしょう / こくびしお)」を古文書や記録を読み解き奈良で再現された古代ひしお。

大鉄砲(おおでっぽう)とは・・・奈良に伝わる幻の大豆。地元農家さんが「お味噌にするとおいしい」と、先祖代々種を受け継ぎ自家採取されている在来種。もともとは、田んぼの畔(あぜ)で稲(米)と一緒につくられていたが、稲の品種改良で収穫期にズレが生じたことや栽培における苦労、高度経済成長に伴う農業変革(主に効率化や作り手の減少)などの理由で減少した。
昭和23年創業の大豆加工製造販売を行う有限会社三木食品工業(奈良市)の当代 近藤正洋氏が奈良県産大豆を探すうち2016年に出会った奈良の在来種である大鉄砲を、田原本町の鎌田ファーム(後述)と共に2017年復活させた。
現在、豆腐を初め醤油、味噌、きな粉、豆乳、ジェラートと様々な商品化に成功。
大豆の花言葉は『可能性は無限大』

 

Apribocca アミューズ◆
味間いものリゾット 大和茶のスープ ~茶粥 Chagayu~

味間いものリゾット 大和茶のスープ ~茶粥 Chagayu~

アミューズは、IW100のテーマである「パスタ未来形」へ向けての導入メニューです。
奈良の伝統的な朝食である茶粥。ここ奈良市小西町が発祥とされています。
リゾットを炊く際、米に大和茶ほうじ茶を含ませ、仕上げにパルミジャーノ・レジャーノをたっぷり加えた最もシンプルで基本的なリゾットの茶粥仕立てです。日本とイタリアの食文化の融合と革新を実現しました。
アミューズでは夜が明け新たな1日が始まったことを、コースの始まりに重ねて表現しています。

  • 磯城郡田原本町鎌田ファームの五分づきにした玄米と、奈良市田村青芳園茶舗の大和茶を使用。大和茶焙じ茶を含ませパルミジャーノ・レジャーノ(24ヶ月熟成)で仕上げたクラシックなリゾットに、大和茶焙じ茶の粉茶をまぶした味間いものコンフィを乗せる。仕上げに大和茶の煎茶のスープを静かに注ぐ。リゾットとミネストラ、奈良の茶粥を一皿に融合したChagayu。コクのあるしっかりとしたチーズをまとった米を大和茶がさらさらとほぐし清涼感を与える。
    焙じた大和茶が香ばしく、田原本町 西浦 正嗣さんの素晴らしくキメの細かい身質がしっとりと詰まった味間いもの食感と共にアクセントとなり、食後は大和茶がふわりと香り口中がさっぱりとする。

茶粥とは・・・奈良を代表する郷土食である。「大和の朝は茶粥ではじまる」と言われるように、奈良の茶粥は特に有名。寛永年間(1624~44)に井戸屋弥十郎という人が、奈良市高畑町(シェフ山嵜の自宅付近)の神職から習い、奈良市小西町(リストランテ ボルゴ・コニシの所在地であり店名)で茶粥屋を始めた。その後、1657年江戸で「奈良茶飯」として流行し日本の外食産業の始まりとなった。
その茶粥発祥の地で、令和のイタリアンレストランにてChagayuをお召し上がりいただく。

田村青芳園茶舗について・・・猿沢池から南へ200mのならまちに位置する老舗の大和茶専門店。昔上ツ道(かみつみち)と呼ばれた伊勢街道沿いにある。店頭でご主人が毎日焙じるほうじ茶の香りは格別。月ヶ瀬を中心に厳選した大和茶の品揃えが豊富だ。
ボルゴ・コニシで最後のお飲み物にお出しする、珍しい月ヶ瀬の抹茶「大和の和(なごみ)」は渋みがなくまろやかで海外の方にも好評だ。また、味のあるパッケージデザインはご主人の手描きを元にしており贈り物にも最適。近隣の昔ながらのお客様はもちろん、県外のファンも多い。
味間いもとは・・・大和伝統野菜で奈良県在来のサトイモ

◆Antipasto 前菜◆
ボスコ・ディ・ブロッコリー

ボスコ・ディ・ブロッコリー

第一前菜は、イタリア原産の代表的野菜の一つであるブロッコリーを主役にした一皿です。
華厳経に「世界は美しく飾られたみごとなものだ」また「美しい世界は実践によって実現される」という記述があります。
常日頃私は、食材の中でも特に野菜は美しくみごとなものだと思っており、その美しさを皿の上に置こうとして生まれた料理です。
山や森は水を蓄える大切な存在です。奈良の人々は山をご神体として敬い、水信仰と共に伝えてきました。
春日山原始林を模したブロッコリーは美しい花蕾に大地の水と、料理という人類の英知を蓄えています。

  • 五條市 益田農園のブロッコリーは、驚くほど花蕾が引き締まり旨みが詰まっている。しっかり茹で野菜の甘みを引き出して尚、花蕾にソースを蓄える力がある。イタリアの伝統料理バッカラ・マンテカートにブロッコリーのピュレを混ぜ、爽やかな水分と軽やかさを加える。その上に、ドライトマト、松の実、干しブドウなどから成るソースを花蕾に蓄えたブロッコリーを添えた。花蕾に溜まったソースが噛むほどに口中に溢れる。ブロッコリーの特徴を活かしバッカラ・マンテカートに華を添える一皿となった。
ブロッコリーについて・・・キャベツの一種がイタリアで品種改良され、花を食用とする現在の姿になった。和名はメハナヤサイ(芽花野菜)、ミドリハナヤサイ(緑花野菜)

五條市益田農園について・・・吉野連山や紀伊連峰の美しい山々に囲まれた奈良県五條市。この地は果樹・野菜の栽培に適した気温や湿度にも恵まれ、適度な寒暖差がある。自然に逆らわず、山間の傾斜をそのまま利用した広々とした農園で循環型農業に取り組んでいる。

 

◆Antipasto 前菜2◆
チンクエ・フォルマ

チンクエ・フォルマ

第二前菜は、5種のチーズそれぞれにイタリア料理法をひと手間加え組み合わせた前菜です。
5種の個性豊かなチーズが反発しあうことなく相互に引き立て合う様は、華厳の世界観である「ミクロからマクロ、マクロからミクロ」そのものを表します。
神山である御蓋山ミカサヤマ(春日山)の麓、東大寺のお膝元であり興福寺の元敷地内空中2階ボルゴ・コニシで日々過ごす、奈良で育った私という料理人からしか生じないチーズ料理です。
イタリアの代表的な5種のチーズを結集し湧き上がるミルクの泉を表した、平和を象徴する一皿です。

  • イタリア料理コンテスト『プレミオアッチ2019』において全国3位入賞の5種のチーズを使った前菜。イタリアチーズ熟成士ジョリート氏のチーズを使用。ゴルゴンゾーラと焦がしはちみつのパンナコッタの土台をドーナツ状にくり抜き、モッツァレラチーズを溶かしたスープを流し込む。パルミジャーノ・レジャーノ(24か月熟成)を薄くシート状に焼いて乗せ、アバーテ(山羊)とラルドのバットゥータ、マスカルポーネとアマレッティのバットゥータをそれぞれ丸めて乗せる。湧き上がるミルクの泉をイメージした盛付け。ナイフを入れ流れ出るモッツァレラのスープと共に、5種のチーズがさまざまな味わいを生み出す、なんとも楽しいチーズの前菜。

 

◆Primo Piatto 『パスタ未来形』◆
アクア・ディ・ポモドーロ

アクア・ディ・ポモドーロ

IW100「パスタ未来形」
未来へ残したいものとして真っ先に浮かんだ “水” 植物が蓄えた水でありイタリア食文化を象徴する野菜の一つ、“トマトの水“をテーマにしました。
奈良の水の歴史と水に対する人々の祈り。それは生きとし生けるもの全てにおける地球の未来への想いと重なります。
水に導かれるように自然に生まれたアクア・ディ・ポモドーロ。太古から現在、そして未来へ、地球と人類が存在する限り大きく変化することのない普遍性を、今を生きる私が料理という最も平和的な形で奈良から発信する、未来につながる豊かな自然の大切さを表現したパスタです。
より詳しい説明はこちら→https://borgokonishi.com/blog/?p=2540

  • 奈良市前田農園のトマトの力を借りて濾過された、大地の水の恵みを素直に表現した。トマトの旨みと水分を抽出したトマト水のみずみずしく体に染み込む感覚と、その一方で味わいに集中すると、トマトの旨みが凝縮した濃厚なソースが口中に広がる。大和橘のピールを削って仕上げることで、トマトの香りがより一層引き立つ。その香りと共に体に染み込むトマト水が、古代から現在、未来全てがある “今” を覚醒させる。
大和橘とは・・・古事記に“非時香果”(ときじくのかぐのこのみ)として記され、万葉集の多くの歌にも詠まれている。
山の辺の道や中ツ道を中心に栽培されており、「なら橘プロジェクト推進協議会」の長年の地道な活動により絶滅の危機を乗り越えようとしている。
ボルゴ・コニシが大和橘に出会ったのは2017年。今では無くてはならないとても大切な食材である。
中ツ道は、奈良盆地の中央より東を南北に平行する三本の縦貫道。東から上ツ道(かみつみち)、中ツ道(なかつみち)、下ツ道(しもつみち)。「大和三道」ともいう。
奈良市前田農園について・・・代々続くイチゴ農家から、3代目の当代がトマト専業農家へと舵をきった。
水田に向く盆地である奈良の土壌を、独自の研究と試行錯誤を重ねナスの接ぎ木によりトマトの好む枯れた土と錯覚させる方法を実現した。
工夫に工夫を重ねた可能な限り自然な農法、作業効率の向上、収穫の安定化、次世代への引継ぎ、更には近隣の耕作放棄地利用への提案と実施に向けての活動など積極的に行う農園。

 

◆Second Piatto メイン料理◆
ボリートミスト ~大和 YAMATO~

ボリートミスト~大和 YAMATO~

奈良の高原で育まれる食肉と野菜のソースで、奈良の山野を表現したボリートミストで締めくくります。
奈良盆地を囲むように広がる山々で育った鴨、豚、牛から、肉質に現れるそれぞれの山の標高、気温、湿度、水、土、植物などを想起させる、メインディッシュにふさわしいイタリア料理です。
海がない奈良県が未来の美しい水を守るためにできることは、美しい山を保つことです。

  • 御所市 倭鴨(やまとがも)、五條市 泉澤農園のばあく豚を使った自家製サルシッチャ、宇陀牧場 井上牛の奈良県産3種の肉をボリートミストに仕立てた。それぞれ個別に適正な温度で時間を変えて茹でた肉に、炭火で炙って仕上げることで、各肉の味わいに輪郭が現れる。茹でる際に取れたスープは吉野葛でとろみを加えた。添えるソースは、大和橘の葉のサルサヴェルデ、曽爾高原産 梅のモスタルダ、前田農園のトマトを使用したバニェットロッソ。奈良の各食肉の特徴と野菜のハーモニーが存分に楽しめる、イタリア料理の最大の特徴であるワクワク感が伝播するメイン料理。
倭鴨(やまとがも)とは・・・奈良県御所市の標高452mの葛城山麓で飼料・飼育環境・飼育日数にこだわって飼育された合鴨肉。脂質と赤身のバランスが絶妙で、芳醇な旨みが特徴。
ばあく豚とは・・・奈良県と大阪府の県境に位置する標高1125mの金剛山麓の麓にある、農業と畜産業を営む泉澤農園で飼育されている。母系の黒豚からきめ細かい肉質を得、霜を降らせるためデュロックという茶豚を交配した。餌は小麦、大麦、大豆、飼料用米を自家配合した飼料を使い、肥育期間は通常6ヶ月のところ、約7.5ヶ月かけて育てた豚。
宇陀牧場井上牛とは・・・標高400mの宇陀の地で、当代 井上源一氏により昭和43年牛一頭から創業。昼夜の温度差が大きい環境がもたらす、きめの細かい肉質が特徴。原材料から配合割合までこだわった飼料を与え、一頭一頭徹底した飼育管理と愛情を込めたケアのもと育てる。
曽爾高原とは・・・ススキの名所で、官民共同組織による村内で育った米や野菜のブランド化などを目指す農業と、木材加工による付加価値の創造を目指す林業の両分野を中心に、村内で展開する地域イノベーションによる創業を支援しながら、持続可能な農林業の実現を目指している地域。

 

◆Granita 口直しのシャーベット◆
桂のリーフティーのグラニータとヘーゼルナッツ ~クロッカンテ~

桂のリーフティーのグラニータとヘーゼルナッツ ~クロッカンテ~

桂の落ち葉から香るカラメル香を抽出して作るグラニータにヘーゼルナッツを削ることで、クロッカンテを表現しました。
和ハーブ協会会長も驚いた、医食同源や地中海食を思わせるプレドルチェです。

 

Dolce デザート◆
柿のアマレッティ 柿酢のジュレと吉野ニッケイを添えて

柿のアマレッティ 柿酢のジュレと吉野ニッケイを添えて

日本料理に於いて水菓子としての柿をドルチェとして成立させることが、日本そして奈良でイタリア料理を通じて食文化の更なる向上と普及へとつながる、との思いから考案しました。
奈良県は柿の栽培面積全国第3位、収穫量全国第2位であること、またイタリアでも親しまれているフルーツである柿のドルチェで皆さまを口福にします。

  • 奈良県産柿を使用。リコッタに、柿、アマレッティ、リンゴを混ぜ込み程よく熟した柿で包み、柿酢のジュレを添えた。柿酢のジュレの熟成感のある酸味と生リンゴのフレッシュな酸味が重層的に柿とリコッタの甘みを引き立て、アマレッティの香りが華やかに香る。吉野肉桂の葉をパウダーにして添えることで、より洗練されたドルチェに仕上がった。ジューシーでありながら繊細な甘さが特徴の奈良の柿に、イタリアの料理法を合わせることで柿特有の風味の輪郭が際立った。新たな味わいの発見がある一皿。

柿酢について・・・奈良県五條市に本社を構える石井物産の直営店「柿の専門 いしい」の柿酢を使用。石井物産は1965年梅とミョウガの加工会社として創業。その後、漬物の下請け会社として事業を拡大し、1981年干し柿以外の柿の加工品がほとんど無い時代に、「傷つき捨てられる柿をなんとかしたい」という想いから柿の加工を始めた。
現在、柿酢以外にも様々な干し柿や、柿ようかん、柿バターやケーキなど贈り物にもぴったりな豊富な品揃えで、JR・近鉄奈良駅周辺の直営店や土産物店にて購入可能。
特に野菜との相性が抜群でボルゴ・コニシでは多用している。

辰誠園について・・・標高約450mの高原に位置し、農薬と化学肥料を必要最低限に抑え、環境への負荷をできるだけ減らす農法に取り組んでいる果樹園。
吉野高原で太陽の光をいっぱい浴びた完熟の柿は、通常より糖度が高く濃色で食味が良い。昼と夜の寒暖差があることから県内では珍しい、さくらんぼの栽培も行っている。

 

◆Caffe e dolcini 小菓子 食後のお飲み物と共に◆
アマゾンカカオのモディカチョコレート 大和橘のフレーバー
希望の花 ストライプペポとアマゾンカカオバター

アマゾンカカオのモディカチョコレート 大和橘のフレーバー/希望の花 ストライプペポとアマゾンカカオバター

小菓子は、アマゾンカカオと奈良の新たな食材を組み合わせて未来への想いを託しました。
アステカ文明を起源とするシチリアのモディカチョコレートには大和橘を添え、日本とイタリアのこれからも変わらぬ友好関係を象徴します。
“希望の花“と名付けた菓子には、アマゾンカカオバターに現在奈良県が品種改良及び将来性を模索しているペポカボチャの種子 ”ストライプペポ“ を添えました。
僅かな可能性から生まれた植物から料理人が新たな一面を引き出し、光を当て、人々にその価値を広め共有し楽しんでいただく、未来が地球にとって素晴らしいものであるよう願いを込め、コースを締めくくります。

ストライプペポとは・・・2014年に品種登録された寒冷地向きのペポカボチャ(種子食専用のカボチャ品種)の一種。
製菓業界などに於ける国産の食用種子に対する要望から始まった。国の研究機関である農研機構北海道農業研究センターで開発が行われ、栽培し易く種に厚い殻がないため殻を剥がす必要がない、また種子収量が既存品種に比べ多い品種として開発された。
種子が優良である反面、果肉が大きいため栽培面積を要する上、食味が悪いことから種子だけでは採算が合わないと当初は栽培農家が増えず無駄な開発だったのでは、という声も聞かれるようになった。
そのストライプペポに2015年、奈良県農業研究開発センターが着目。当センターは、“オンリーワンの研究開発を目指し、奈良ブランド力の強化を図っていく” を指針としている。
奈良県桜井市の圃場では1株から3~6kgの果実が2~4個収穫でき、1個の果実からは50~110gの種が収穫できた。以来毎年栽培し、現在100g1,000円で商品化している。
北海道と奈良県では、次なる課題である果肉の有効利用について研究が続けられている。

 

2023年度 IW100『パスタ未来形』”アクア・ディ・ポモドーロ”について解説

2023年度 ITALIAN WEEK 100『パスタ未来形』についてご紹介いたします。

<山嵜正樹の考え>
料理を考案する際、私が最も大切にしていることは「また食べたいかどうか」
リストランテなのでケではなくハレではあるが、華美で稀少でごく一部の人が味わえるような料理がハレだと思う方もいらっしゃるでしょう。
私が提唱するのは、プロフェッショナルな料理人として知識と技術と時間をかけた家庭では味わえないお料理を家族と仲間と、近所で旅先で味わいリラックスして楽しむ、皆さまの日常のすぐ近くに寄り添う、何度でもどなたでも訪れることができるリストランテです。

その上で今回のIW100のテーマ『パスタ未来形』を考えたとき、未来へ残したいものとして真っ先に浮かんだ “水” 
地球上のあらゆる生命体の未来に欠かせない清らかな水をテーマにしました。

中でも人間が ”そのまま飲める水” は限られており、飲める水にするため植物や野菜の力を借りています。そのままでは飲めない水を、野菜に吸収してもらい、動物に植物を食べることで体に蓄えてもらい、調理してそれらの水をいただいています。

人は自然と共にあります。水は未来からの借り物です。水は地球の歴史を地層として記録していきます。
今夏、地質学の専門家たちにより、46億年の地球の歴史の上で人類の痕跡が残る時代を区分する、新たな地質年代「人新世」(じんしんせい、または、ひとしんせい)を設けることが国際学会に提案されました。
「人新世」は、現在の「完新世」に続く新しい地質年代の区分として2009年から検討されており、始まりは1950年ごろを採用するとされています。
この時期、世界の人口やプラスチック、コンクリートなどの人工物の生産量が爆発的に増えており、50年代に急増した核実験によるプルトニウムも世界中の地層や氷床に既に ”記録” されています。
”人類の痕跡が残る時代” が地球歴史上前代未聞の ”欲望と傲慢に満ちた恥ずかしい地層” として積もりつつあります。ちなみに1950年代までは人類の理性がぎりぎり働いていた時代で、その後タガが外れ現代に至るということです。

私はこのことを知り驚愕しました。
私たち一人一人にできることは僅かであっても、今どう過ごすか、例えば水をどう考えるかで未来が変わるといえるでしょう。誰も未来の水を汚したくはないと思います。

植物の力を借りて濾過された大地の水の恵みをいただくパスタが、“アクア・ディ・ポモドーロ” です。未来へ残したい美しい水への想いを表しました。

繰り返しになりますが、水はあらゆる生命の命を育みます。人は飲料としての水の他に、農作物へと形を変えることでも水を摂取しています。
中でもイタリアで長い年月をかけて食用として開発されたトマトは日本にも定着し、イタリア料理と共に広まりました。トマトから抽出したクリアな水に未来への想いを託しました。

トマトの水に華を添え未来へと誘うもう一つの植物 “大和橘”
古事記に“非時香果”(ときじくのかぐのこのみ)として記されている大和橘は、万葉集の多くの歌にも詠まれている日本固有の柑橘です。現代の奈良人により今、絶滅の危機を乗り越えようとしています。

可憐な大和橘の芳しい香りが、大地の未来を見据えた農業を行う奈良市前田農園のトマトと共に未来につながる豊かな自然の大切さを想起させてくれます。

『人は自然と共にある』

奈良に暮らし、日々イタリアの伝統と文化に思いを馳せる中で感じる、自然への敬意と感謝から素直に導き出した“アクア・ディ・ポモドーロ”
料理という最も平和的な形で、多くの皆様に奈良の自然の懐の深さをお届けできることを嬉しく思います。

メディア情報

<WEB掲載>

2023年     『ミシュランガイド奈良2023』

2021年     『和 WA・TO・BI(和食の扉)』
         (㈱エヌ・アイ・プランニング)

2017年     『ミシュランガイド奈良2017 特別版WEB』
         (クラブミシュラン)

        『わたしならTRIP 私旅プランVol.6』
         (JR東海ウェブサイト)

<テレビ紹介>

2018年5月    『ならナビ』(NHK奈良放送局)
          毎週1回 計4回担当

2016年4月、10月 『古都コトクッキング』(NHK奈良放送局)
          毎週1回 計8回担当

2014年1月10日  『ぐるっと関西 おひるまえ』(NHK総合大阪)

         『ならナビ』(NHK奈良放送局)

   10月19日  『サキどり↑』(NHK総合)

   12月22日  『NHK WORLD NEWSLINE』(NHK国際放送局)

<企業タイアップ>

2014年  『いきいき通信 8月号』(味の素株式会社)
       ひもとうがらしのレシピ集監修

<雑誌、書籍>

2023年  『月刊大和路 ならら 9月号』
      (なら文化交流機構 発行)

2022年  『ミシュランガイド奈良2022 特別版』

     『Sommelier 11月刊』
      (日本ソムリエ協会 発行)

2021年  『あまから手帖 5月号』

2020年  『あまから手帖 10月号』

2016年  『naranto 春夏号』

2015年  『奈良食べる通信 創刊号』

2015年  『naranto 春夏号』

2014年  『nala yome 12月号』

2013年  『讀賣新聞 8月8日』

     『讀賣新聞 9月25日』

     『産経新聞 9月25日』

     『毎日新聞 11月7日』

2012年  『県民だより奈良 8月号』

     『料理王国 3月号』

2011年  『LOUIS VUITTON CITY GUIDE 2011 KYOTO / NARA』
      (LOUIS VUITTON 発行)

     『週刊 奈良日日新聞 12月9日~12日』

     『料理王国 3月号』

2010年  『芸妓 菊乃のかわいい奈良』(菊乃 著)

     『料理王国 7月号』

2009年  『毎日新聞 3月25日』

     『Nara Smile 4月号』

2008年  『美味しい奈良 弐』(㈱読売奈良ライフ 著)

     『ぱ~ぷる 4月号』

 

ソムリエ協会機関紙『Sommelier』”石田 博のペアリング探訪記” に掲載されました

ソムリエ協会機関紙『Sommelier』(2022.11.NO189)のソムリエ協会副会長 石田博氏による連載 ”石田 博のペアリング探訪記 Series4” に掲載されました。

ソムリエ・エクセレンス 山嵜愛子の仕事における思想と流儀について取材をしていただくという、大変な幸運に恵まれました。石田副会長には、この場をお借りして心より感謝申し上げます。

取材に向けての準備、自分の仕事の振り返り、そして取材当日、とても充実した楽しく貴重な時間でした。今でも鮮明に心に残っています。
掲載記事の最後、”取材を終えて” では大変励みになるお言葉をいただきましたので、僭越ながらご紹介させていただきます。

誰に師事したかではなく、どれだけ身につけたか、山嵜シェフが
二人の師匠から愚直に吸収したことを4皿の料理が見事に表
していた。一切の迷いがない料理は山嵜シェフの研鑽というフ
レームに正しく収まっている。取材の数日前に送られてきた資料には料理の詳細、ストーリー、ワインのテクニカル情報、ペアリングのアプローチが丁寧に記されていた。ソムリエ・エクセレンスの名に相応しい、まさに卓越した仕事だ。
「足を伸ばしても訪れるべきリストランテ」である。

このお言葉に恥じないよう、今後とも積み重ねを大切に日々精進してまいります。

第12回全国イタリア料理コンクールで優勝しました

2021年11月25日㈭東京で開催された在日イタリア商工会議所主催『第12回全国イタリア料理コンクール』にて優勝、及びJapan Olive Oil Prize賞(オリーブオイルの使い方が最も優れていたシェフに贈られる賞)をダブル受賞いたしました。

テーマは「お米料理」出品作品は『栗とラルドのリゾット 大和橘の香り』

コンクールの審査委員長であるアルマーニ/リストランテ銀座 エグゼクティブシェフ カルミネ・アマランテ氏から下記のコメントをいただきました。

”イタリア料理の大切なことは、自分の創造した料理を自分の独自の芸術作品として誇りを持ち、常にテーマやコンセプトにこだわって、自分自身の言葉で語ることができる正真正銘のイタリア料理を作ることだ。今回は、甲乙つけがたい若手のイタリアシェフたちの熱い戦いであった。いろいろな工夫を凝らしたものも多かったが、王道のリゾットのスタイルを独自のセンスで際立っていた山嵜シェフに栄冠を与えた”

審査委員長 アルマーニ/リストランテ銀座 エグゼクティブシェフ 
カルミネ・アマランテ氏と

日々試行錯誤し積み上げてきたことをイタリア人のトップシェフから評価いただいたことで、自信へとつながり指針となりました。心より感謝申し上げます。

優勝の副賞として、アルマーニ/リストランテ銀座で1週間の研修を受けることになりました。短い期間ですがアマランテシェフの料理哲学を通して、イタリア料理の本質を垣間見たいと思っています。

*研修期間中2022年3月1日㈫から10日㈭まで、臨時休業致します。

食品展示会『プレミオアッチ2019』の第二回イタリア料理コンテストで3位入賞いたしました

10月9日㈬に東京都立産業貿易センター台東館で行われました、(一社)日本イタリア料理協会およびイタリア大使館貿易促進部主催の食品展示会『プレミオアッチ2019』のイタリア料理コンテストの決勝戦に出場いたしました。

103名の応募の中から6名が決勝に進出し、 リストランテ ボルゴ・コニシ  オーナーシェフ山嵜正樹は、3位に選ばれました。

以下、山嵜正樹より感謝の言葉を述べさせていただきます。

”この度は、プレミオアッチ2019にて3位入賞をいただき、誠にありがとうございます。審査委員長のラ・ベットラ シェフ 落合務氏をはじめ、 イタリア大使館 貿易促進部 部長 アリスティデ・マルテッリーニ氏、 BU Cheese Bar シェフ シモーネ・ブージ氏、 ㈱クアトロヴィーニ代表取締役 永瀬 喜洋氏に自分の料理を評価いただき大変光栄に存じます。

今大会のテーマは『イタリア産チーズ』で、イタリアを感じられるかが最も大切な審査基準でした。私が日頃大切に考えている独創的でありながらイタリアの郷土料理をベースにしたどこか懐かしさを感じさせる一皿を5種のチーズで表現しました。

出展料理の前菜『Cinque Forma チンクエ・フォルマ』です。


湧きあがるミルクの泉をイメージしました。
5種のイタリアチーズを使用すること、またチーズの起源が古代まで遡ることから古代ラテン語でフォルマッジョの語源である“フォルマ”を用い、メニュー名は『チンクエ・フォルマ』としました。  
ミルクがさまざまな変化や熟成を経て多種多様なチーズが生まれ、更にチーズとして変化熟成を重ねていく不思議さと、イタリアチーズならではの他の素材と合わさってこそ本領を発揮する懐の深さを表現しました。
土台はゴルゴンゾーラと焦がしハチミツのパンナコッタで、その中央をくり抜きモッツァレラとミルクのソースを中に注ぎ、バジルの香りを付けたオイルをたらします。パルミジャーノレジャーノのクロッカンテで蓋をし、ヤギのミルクのチーズ マティネとラルドを叩いたバットゥート*と、マスカルポーネとアマレッティを混ぜたものの2種のチーズをのせました。  5種のチーズを同時に食しても不思議とそれぞれがお互いを引き立てたり、アクセントになったりしながら最後まで食べ飽きない楽しい料理になりました。

2022年よりイタリアの生ハムの輸入が停止されております。またマティネの輸入が困難になったため、アバーテまたはカステルマーニョと自家製リコッタクリームを混ぜたものにレシピを変更いたしました。

審査員の皆様からは、

”これだけの細かい作業を確実に正確に素早く行う技術力が素晴らしい。イタリア料理の未来は明るい”(落合氏)

”盛り付けの美しさは秀逸で、早速妻に画像を送信した”(マルテッリーニ氏)

”5種類ものチーズを使いつつ味のまとまりを感じるということは非常に技術の高さを感じる”(ブージ氏)

”スパークリングワインと合わせれば軽やかさが出せるし、中からモッツアレラのソースが溢れ出す演出は大変楽しい。確かに前菜として仕上がっている”(永瀬氏)

壇上での調理中は、リストランテ アルポンテ シェフ 原宏治 氏に 優しく気遣いながら 調理方法についてインタビューしていただき、緊張の中で大変心強く感じました。お礼申し上げます。

このような経験とコメントを頂けること自体を大変光栄に思います。今後の励みになります。まだまだ目指すところには遠く及ばず至らない点もございますが、皆様の温かいお言葉を胸に、今後も初心忘れずより一層精進してまいる所存です。今後ともリストランテ ボルゴ・コニシをどうぞよろしくお願い申し上げます。”

シェフェスタ2018 シェフズキッチン食材生産者一覧

いよいよ明日に迫りました、コムニコXボルゴ・コニシ共演”シェフズキッチン”inシェフェスタ2018!!

予想外の天候が続く中、多くの生産者さまにご協力いただき、色とりどりの食材が揃いました!!

この場をお借りして、厚く御礼申し上げます。

<メインプレート>
米       大西さん(曽爾村)
サフラン    笹岡さん(宇陀市)
パセリ     寺田農園(葛城市)
きのこ     岡本さん(吉野)、上湯川きのこ生産組合(十津川)
ローズマリー  山嵜正樹(奈良市)

<バーニャカウダ>
【曾爾テロワール】
かぼちゃ“ブラックのジョー”(井上善富さん)
シカク豆(井上善富さん)
ミニトマト“ぷちぷよ”(田合林業)
なす(河合 達さん)
パプリカ(田合広司さん)

【御杖村】
サラノバレタス(山浦農園)
ほおずき(北岡すみ子さん)

【ひらひら農園(生駒市)】
ラディッシュ
にんじん
熟成じゃがいも“ノーザンルビー”

【奈良県農業研究開発センター(桜井市)】
やまと甘なんばん

【コムニコ 堀田シェフのお義父さん】
にんにく

<ブディーノ・チョコラータ>
古代醤(ひしお) 奈良県醤油工業共同組合(天理市)
大和橘      なら橘プロジェクト推進協議会(大和郡山市)

明日、県庁前奈良公園にてお待ちしております。

シェフェスタin奈良 2018 ”シェフズキッチン”に出演いたします

ボルゴ・コニシは、今年10年目を迎える奈良の食の祭典『C’festa シェフェスタ』の奈良会場にて行われる“シェフズキッチン”に出演させていただくこととなりました。出演は、9月22日土曜日、生駒市のCOMMUNICOコムニコ オーナーシェフ堀田大樹氏との共演です。

奈良の食材盛り沢山でお届けします。

メインメニュー: ¥1,800

  • ヤマトポーク脛肉の煮込み 大和橘のグレモラータ風味
  • 曽爾の米と宇陀のサフラン 奈良のさまざまな茸のリゾット
  • 奈良県産薩摩芋とローズマリーのフォカッチャ

サイドメニュー:

  • 奈良県産野菜のバーニャカウダ ¥600
  • アマゾンカカオと古代醤のブディーノチョコラータ 大和橘のコンフィ ¥600

数に限りがございますので、お早めにお越しください!!奈良公園でお待ちしております。

シェフェスタin奈良は、奈良公園県庁前、登大路園地にて、9月15日(土)~24日(月・祝)10時から17時まで開催されます。
10周年である今年の日替わりシェフのお料理が楽しめる “シェフズキッチン” は、奈良のシェフのみが参加します。普通の屋台では味わえない、シェフたちが工夫を凝らした1日限定 “アウトドアメニュー” をお楽しみください。
その他、 “料理屋の屋台” や飲み物も充実、最後はマルシェでお買い物、奈良のうまいもん大集合の10日間!晴れますように!おなかすかせて、お越しください!!

コムニコXボルゴ・コニシは、10月22日です。宜しくお願いいたします。

大和橘を植樹しました

4月2日、山の辺の道に大和橘を2本植樹しました。向かいに渋谷向山古墳、背景に植えたての桜、菜の花と雪柳に囲まれた絶景です。

収穫用なので、からたちの木に接木してあり接いだ部分を地表に出しておくことがポイントです。画像の地面から太くでている白い枝がからたちで、そこから伸びるやや細いグリーンの枝が大和橘です。

天候にも恵まれ大変楽しいひとときでした。
城さん、仲尾さん、久保田さん、お忙しい中本当にありがとうございました。