11月18日㈯~26日㈰、日本全国北海道から沖縄まで、各地域のイタリア料理店100店舗にて一斉に特別メニューが振る舞われる、大型レストランイベント ”ITALIAN WEEK 100” テーマは『パスタの未来形』
参加の打診をいただいた年始、すぐに閃いたテーマ ”水” と未来永劫イタリア料理を最も象徴すると考えた ”トマト”
そして生まれた、アクア・ディ・ポモドーロ。
前田農園のトマトに出会うまでは、イタリア産のできるだけ手を加えていない瓶詰や缶詰のクラッシュトマト、ドライトマトなどを数種ブレンドし、生のトマトを加えたりしながらトマトソースを作っていた。
改めて探してみると、奈良市に味よし品質よし且つ持続可能を地で行くトマト専業農家さん在り、との情報で2月20日前田農園さんを訪ねた。
ご紹介いただいたものの2月、しかも奈良は極寒。ところがトマトについてよく調べてみると味の旬は3月と判明した。ちなみに夏は収穫の旬。
イタリアでは、料理に使うトマトは旬だけ食べるというより加工保存し翌年の収穫まで年間を通して消費していくため、3月の味の旬にしっかり蓄えておけるという、理想的なタイミングでの出会いだった。
イチゴ農家に囲まれた前田農園さんも代々イチゴ農家だった。トマト専門へと大きく舵を切ったのは、3代目である当代の前田伸一さんだ。
「みんなに不思議がられ、無理だと言われ、迷惑もかけた。でも、同じくらい助けてもらった。」優しく強いまなざしから、生まれ育った土地を愛する人の信念が垣間見られる。
現在、前田さん家族とパートさんも合わせ10名ほどで20基のハウスを管理する。当代指揮の元、栽培から袋詰めまで女性陣の細やかな心配りが感じられるトマトだ。桃太郎トマト「大和の恵」とフルーツトマト「あかつきトマト」の2種を生産販売している。
枝で完熟させてから収穫するため、自分たちで納品できる距離と数量を徹底している。そのことが高品質を保つことに繋がっている。
収穫期は2月から7月。真夏は太陽熱を利用してハウス内の土を殺菌し土作りを行う。たい肥は自家製にチャレンジしつつも、「餅は餅屋」という考えからプロの作った優良なものを使用している。
桃太郎の品種に関して生産量が落ち着いてきていたが、新たな害虫が目立つようになった。九州に生息する害虫が数年前から奈良を含め他府県で見られるようになったのだ。
この害虫に対処した新桃太郎が現れたが、以前の桃太郎より非協力的で生産者泣かせ。「俺は俺」と我が道をいく品種。
それでも以前の品種はこの新桃太郎に取って代わられている。なんとかご機嫌を伺いながら「二人三脚でやっていくしかない」と前田さん。
確実に困っているのだが、どこか楽しんでいるようにも見受けられる。蓄積した技術、知識、経験豊富ゆえの更なるチャレンジ精神。トマトも安心して身を任せ伸び伸びと育つのだろう。
ハウス内へご案内いただいた。
ビニールハウスは二重構造で外側が紫外線カットになっているため、虫にとってハウス内は暗黒世界だ。そうとは思えない日光の熱を感じる明るさ。やはり多少の日焼けは免れないとのこと、残念。
暗黒世界となると蜂による交配はできないが、害虫の侵入を防ぎ減農薬を優先している。害虫を極力入れないとなると、気温調節が問題となる。
細かい設定ができるタイマー機能を使って24時間のこまめな気温調節と扇風機による空気循環により、急な気温変化の心配がない上、トマトの生育に適した乾燥環境を実現した。以前は、天候の急変が心配になると夜中でも確認に行っていたそうだ。
作業の軽減は効率化にもつながり、結果、家業として持続可能となる。
土壌にも工夫が施されている。盆地である奈良の元来水田だった土地をトマトに最適な枯れた土壌にするため、ナスに接ぎ木してトマト自体は水を吸わないようにしている。水は井戸水をドリップで枯れない程度にごく少量与える。
前田さんが栽培する「大和の恵」と「あかつきトマト」はいずれも桃太郎トマト。同じ品種を土と液肥の違いによりハウスを別々にして作り分けている。
フルーツトマトに仕立てる「あかつきトマト」には「大和の恵」より濃度の濃い液肥を与える。液肥でトマトの濃い味が作られるわけではなく、濃度を濃くして植物に水を吸わせないようにする。カルピスの原液が飲みにくいのと同じだ。
トマトは水が足らず空気中の水分まで得ようとして茎やへた、実にも産毛を生やす。前田さんのトマトには茎から葉っぱまで全てにびっしりと産毛が生えていた。ものすごい生命力だ。息遣い(光合成)の音さえ聞こえてきそう。産毛はトマトが熟しても消えない。
株の仕立ては、全国一のトマト産地である九州に見学に行き思いついた独自の方法で、枝を斜めに誘導する。できるだけ茎を長く伸ばし収量を上げることが可能となり、収穫する位置を低く保てることで作業が楽になり効率も上がる。
ハウス内の隅々まで清潔で手入れが行き届いている。トマトがとても心地よく過ごしていることが感じられる。
前田さんは親世代から受け継いだ全てに感謝しつつ、古きものはなくし良いものだけを引継ぎたいと強い意志で語った。
中でも目の前で増えていく耕作放棄地は、待ったなしの状況だと危惧する。生まれ育った里山を守るため、行政にも積極的に協力し耕作放棄地の区画整理や共同生産を提案、学校では体験学習など定期的に行っている。
「イチゴからトマトへ転換し多くの人に助けられた。恩返しをできるだけしたい。せめて孫の代までは自分にできることがある」
前田農園は、娘さんご夫婦が後継者として活動を始めている。
前田さんのトマトを初めて食べたとき、歓喜した。体中の細胞が欲し、みるみる吸収していく感覚。一度食べたら忘れられない味わい。
前田農園のスタッフの皆さまが口々にするのは「前田さんのトマトが美味しすぎて、働かせてもらって10年以上になります」中には20年なんて方も!!「いろいろな年(の味)があるけど本当に美味しい!毎日食べてます!」
収穫のお忙しい中、前田さんには貴重なお時間をいただき、飲食業に携わる上で今後の指針となるような貴重なお話を伺いました。この場をお借りして心より感謝申し上げます。
ちなみに、ワインのインポーターをしているイタリア人に味見をしていただいたところ「日本で、奈良で、こんな美味しいトマトが穫れるとは、心から驚いている」
味見をしていただいたのは7月。前述の通り収穫の旬の時期だが、彼は3月の味の旬に収穫したトマトで作ったソースだとまで言い当てた。
更に、7月でこの品質だとしたらイタリアのトマトより凄いということになるが、3月なら多少納得できる、ただ、日本でここまでのトマトには出会ったことがない、しかも奈良市とは信じられない、と驚きを隠せないようだった。
私も驚きを隠せなかった、彼の凄すぎるテイスティング能力!!
彼の正体は、トマト産地で有名なプーリア州のトマト農家のご子息だそうで、インポーターをする以前、イタリアでは長らく星付きレストランでソムリエの経験があり、このテイスティング能力によりシェフから絶大な信用を得て、共に新作料理の完成にも携わっていたそうだ。
その後、料理とワインのペアリングについて、彼の持論を聞きまくったことは言うまでもない。そして、彼が輸入するワインを購入した。
この素晴らしい前田農園のトマトの純粋な ”水” を抽出した、リストランテ ボルゴ・コニシのパスタの未来形『アクア・ディ・ポモドーロ』
11月18日(土)いよいよリリースです!!お楽しみに!!