◆奈良のほうせき シキシキ・シュマーレン◆

ボルゴ・コニシの新たなドルチェ『奈良のほうせき シキシキ・シュマーレン』をご紹介します。

奈良のほうせき シキシキ・シュマーレン

奈良のほうせき シキシキ・シュマーレン

このインパクトのあるネーミング、ふざけているわけではない。紛れもない奈良の郷土食とイタリア食文化の融合を実現した、シェフ山嵜の真骨頂、いわば『奈良スローフードイタリアン』を表現したドルチェである。

『奈良スローフードイタリアン』とはシェフ山嵜の造語である。
奈良の郷土食を現代的イタリアンで表現することで楽しさやおいしさを伝え、奈良の歴史や文化に興味を持ってもらう架け橋となるイタリア料理の総称である。

スローフードは、1986年イタリアのカルロ・ペトリーニにより提唱された国際的社会運動で、ファストフードに対し唱えられた。その土地の伝統的な食文化や食材を見直す運動が現在160ヵ国以上で地道に続けられている。

シキシキ・シュマーレンは、古来小麦栽培が盛んな奈良の”ほうせき”「しきしき」とイタリアのトレンティーノ=アルトアディジェ自治州のカイザーシュマーレンを融合し、奈良の郷土食を現代的イタリアンドルチェで蘇らせた。
トレンティーノ=アルトアディジェ自治州は、第一次世界大戦までハプスブルク家領の一部であったオーストリア=ハンガリー帝国の統治下にあったため、現在も公用語は主にイタリア語とドイツ語である。

奈良の方言でおやつを表す「ほうせき」

奈良県桜井市は扇状地で、8世紀には朝廷が小麦や大麦の畑作を奨励したこともあり、昔から小麦の栽培が盛んで、水車で挽き料理やおやつに使用してきた。
万葉集には「麦」が登場し、三輪素麺は古来の名物である。
戦前には、小麦粉に水と砂糖を加え薄く焼いた「しきしき」というおやつがあった。
當麻の辺りでは最近まで提供していたお店があったようだ。

一方、オーストリアの有名なデザート「カイザーシュマーレン」は、北イタリアのトレンティーノ=アルトアディジェ自治州でも人気だ。オーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ1世(19世紀後半から20世紀初頭のハプスブルク家のオーストリア皇帝)が好んだデザートという逸話から「皇帝(カイザー)が好んだ、引き裂いた(シュマーレン)パンケーキ」と呼ばれている。(なぜパンケーキが引き裂かれていたのかについては、皇后エリザベートの美貌に関わるのだが、ここでは割愛させていただく)

そして生まれた『奈良のほうせき シキシキ・シュマーレン』

小麦粉は奈良県産小麦ふくはるかを使用。中力粉であるため、薄力粉を使ったふわふわホットケーキでもなく、クレープのような薄いもちもちでもない、丁度中間の厚みで絶妙な食感に仕上がった。カイザーシュマーレンは強力粉を使用するためもっちりとした歯ごたえがある。
しきしきには黒糖が使われたことから、シェフお気に入りのインドの黒糖 ジャグリーで素朴ながら洗練された風味に仕上げ、レーズンを混ぜ込む伝統的なカイザーシュマーレンの要素を取り入れた。
オリーブオイルをベースに大和橘とヘーゼルナッツを加えたソースは、巻き込まれたパンケーキの間からキラキラと宝石のようにこぼれ落ちる。
シキシキ・シュマーレンにほんのり染み込ませたエスプレッソが香り、アクセントに忍ばせたザバイオーネソースが全体をまとめる。
大和橘の爽やかな酸味が良いアクセントとなる。

奈良で生まれたシキシキ・シュマーレンもカイザーのお気に召すことだろう。

 

参考文献:『聞き書 奈良の食事(日本の食生活全集㉙)』農山漁村文化協会 出版