烏梅、最後の生産者 月ヶ瀬梅古庵さんを訪ねました

紅工房前にて中西さんとシェフ山嵜

前回ご紹介した「奈良の香りと共に味わうタリアータ」に添える奈良のフレーバーの一つとして、当店では欠かせない存在となった「烏梅(うばい)」
烏梅は煤をまぶし燻製にした干し梅です。漢方として煎じて飲む他、紅染めの色素定着剤として使われています。
この素晴らしい伝統食を最後の1軒になっても作り続けている方が、奈良市月ヶ瀬にいます。
伝統製法を守り続ける月ヶ瀬梅古庵10代目中西謙介さんを訪ねました。

~(中略)~

訪問し烏梅から多くを学びました。

烏梅がなくなれば紅餅は不要となり、紅染めの技術を継承する染色家が途絶える、ウメスダレもクヌギも、消滅の連鎖が起こります。
一つの伝統が欠けると思ってもみない多くの技がこの世から消滅することを、昨今特に、奈良の歴史や文化、食文化を通してつくづく気付かされます。

職人さんたちの思いの連鎖でなんとか繋いでいる日本の伝統を、イタリア料理店として、日本人である私たちにできることは何か。

シェフ山嵜は、こう言います。

「料理人の私にできることは、素材の新たな一面をイタリア料理に融合させることで、その魅力を掘り起こし多くの皆さまに知り体験していただくことだと思います。

これまでの料理人生の中で、奈良に身を置き、奈良の土地の恵みを受け、イタリア料理の本質を模索してきました。

季節を大切にし日々様子が変わる食材に深く向き合う、自然と健康がつながっているマンマから生まれたイタリア料理は、日本の食文化に通ずるものがあると感じます。

しかし、恥ずかしながら私を含め、現代日本人は日本の郷土食を忘れ、気付かない内に失いつつあります。

日本はじまりの地、奈良。
国風文化が花開く以前、他国と交易のあった奈良時代の食文化は、特にイタリア料理との親和性が高いことに気づきました。

実際、様々なお料理として食べていただくと予想以上に、奈良や日本の方のほうが海外からのお客様以上に喜んでくださいます。
大変嬉しい瞬間です。

あたりまえだと思っていた日本の食材の新たな一面を見て味わい、見直すきっかけになったり、消えつつあって知らなかった伝統食を新しい、美味しいと感じていただけることを、自分の料理を通して目の当たりにすると、まだ間に合うと希望がもてます。

奈良各地の伝統食が辿ってきた歴史背景や、日本の固有財産としての魅力を、日本人である私が噛み砕き、伝統的なイタリア料理を基に新たな視点から表現することで、元来の日本らしい豊かな暮らしを提案できるのでは、と思っています。」

伝統食は、日本全国津々浦々にある日本固有の宝だと思います。
見直してみる時が来ているのだと感じます。

~note本文より~

烏梅と紅染

烏梅にご興味のある方は、
note「烏梅、最後の生産者 月ヶ瀬梅古庵さんを訪ねました」全文をご覧ください。
https://note.com/borgokonishi/n/n18eda70c4609

烏梅が月ヶ瀬に広まった歴史や、中西さんが最後の一軒になっても烏梅を作り続ける理由、そして烏梅の作り方やお買い物情報まで盛りだくさんの内容です。

烏梅を知り、購入したり体験したり、月ヶ瀬に行ってみたり、みなさまの楽しいくらしのひとつに加われば幸いです。

続編「月ヶ瀬梅林と梅畑と梅食品」もよろしければご覧ください。
https://note.com/borgokonishi/n/n9f423c0323a5

梅古庵から見下ろす名張川

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